清水建設は、繊維補強モルタル「ラクツム」をマテリアルに使用した3Dプリンティング技術で、埋設型枠となる自由曲面形状の大規模コンクリート柱を製作し、現場に初適用した。
清水建設は、高強度・高靭性の繊維補強モルタル「ラクツム(LACTM)」で積層造形した3Dプリンティング型枠を実現場に初適用したと2021年2月4日に公表した。
適用現場は、自社開発事業として建設中の「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」。敷地内に整備する交通広場の上部を覆う大規模デッキのコンクリート柱4本の埋設型枠を3Dプリントで施工した結果、従来工法では困難だった自由曲面形状を有する高さ4.2メートルの柱部材を短期間で構築した。
建設業界では慢性的な人手不足が懸念され、とくにRC造の施工では、省力化・省人化が喫緊の課題となっている。解決の糸口となるのが部材のプレキャスト化だ。3Dプリントで造形した埋設型枠の活用は、プレキャスト化の概念を現場施工に採り入れた新たなソリューションとなり得る。3Dプリンティングでは、構築物の3次元CADデータさえあれば、任意の曲面形状を自在かつスピーディーに造形できるため、設計の自由度も飛躍的に向上することが期待される。
清水建設が3Dプリンティング材料として独自開発したラクツムは、通常のモルタルに用いるセメントと砂に、長さ6ミリの合成短繊維、高性能減水剤、シリカフュームを付加した繊維補強モルタルで、型枠のような薄い部材を造形する場合でも、形状を保持したまま2メートル以上の高さまで積層できる。耐久性にも優れ、積層面が目視で確認できないほどに一体化し、劣化の原因となる水や空気の侵入を助長する気泡や空隙は、内部にほとんど生じないという。
現場適用では、ラクツムと技術研究所の専用実験施設「コンクリートDXラボ」に配備した材料押し出し方式の3Dプリンティング装置を使用した。3Dプリンティング装置は、PC上で3DCADを基に、アーム型3Dプリンタの動作制御プログラムが自動生成され、ラクツムを任意の形に積層し、高さ2メートル程度であれば約2時間で完成する。ラクツムの硬化後は、プリント層が一体化するため、今までのコンクリにはない粘り強さ(高靭性)を発揮する。翌日には、型枠として十分な強度を保持し、施工現場へ運搬して鉄筋を組んだ型枠内部の空洞にコンクリを打ち込める。
今回は、円状の基部から頂部に向かって、捻れながら花びら状に形を変えていく特殊なデザインが採用された大型柱の埋設型枠を製作した。造形物は、高さ4.2メートルで、直径2.2〜2.7メートルの巨大な柱だったため、柱1体分の埋設型枠を水平方向に3分割と垂直方向に2分割して積層した。製作完了後には、埋設型枠を現場へ搬入し、所定の位置に組み立てた後、コンクリートを打ち込み、特殊形状の4本の柱を完成させた。
なお、積層体の形状は、3Dスキャナーで点群データを取得し、設計段階の3DCADデータと比較することで、高精度に施工できたことを確認した。
清水建設は今後、ラクツムで積層造形した埋設型枠の現場適用を拡大していくとともに、施工現場で実大型枠を直接プリントするオンサイト3Dプリンティングの実現に向けた研究開発も進めていく。
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