大成建設らがアタリを見える化するシステムを開発、除去作業で50%の省人化を実現山岳トンネル工事

大成建設は、演算工房やアクティオと共同で、光波測距儀による建設機械の位置情報と油圧ブレーカーなどの傾斜計情報から、アタリ、余掘りの掘削形状を正確かつ定量的に把握し、建機操作部のモニターに表示することで、オペレーターがアタリ除去作業を安全で効率的に行える切羽アタリガイダンスシステム「T-アタリパーフェクター」を開発した。

» 2021年03月31日 14時00分 公開
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 大成建設は、演算工房やアクティオとともに、山岳トンネル工事で設計断面に対する岩盤の正確な状況を把握し、切羽近傍に作業員が立ち入らず、オペレーターのみで掘削可能な切羽アタリガイダンスシステム「T-アタリパーフェクター」を開発したことを2021年1月6日に発表した。

余掘り量は従来方式と比較して約15%削減

 山岳トンネル工事で発破後に建設機械を用いて岩盤を掘削する場合には、トンネル設計断面に対して岩盤が出っ張る「アタリ」や掘り過ぎによる「余掘り」などの凹凸が発生する。アタリは、設計断面に近づけるために、油圧ブレーカーを用いて取り除き、余掘りは最小限に留める作業が求められる。

アタリ、余掘りの概要図 出典:大成建設

 従来のアタリ除去では、作業員が切羽付近で目視により確かめ、レーザーポインターで削り取る箇所を指示していたため、切羽崩落などが生じた場合にスタッフが巻き込まれる危険性があった。加えて、アタリや余掘りの状況確認は作業員と建設機械オペレーターの経験や技量に頼る部分が大きい他、アタリの撤去不足が原因で、追加作業や過大な余掘りに伴うコンクリート吹付量増大によるコスト増加なども起き課題となっていた。

従来のアタリ除去作業 出典:大成建設

 そこで大成建設は、演算工房やアクティオと共同で、切羽アタリガイダンスシステムのT-アタリパーフェクターを開発した。T-アタリパーフェクターは、建機に取り付けた2個のプリズムを、作業位置の後方約50〜100メートル地点に設置した光波測距儀2基で追尾測距することで、建機の位置・方向をリアルタイムに可視化する。建機の本体やアーム部、油圧ブレーカーの各部に搭載した傾斜計の情報も活用することで、油圧ブレーカーのノミ先位置を正確に導き出す。

T-アタリパーフェクターを利用した施工のイメージとモニター画面状況 出典:大成建設

 上記の情報を設計断面と比較したデータは、建機の操作部に備えられたモニター上の画面に表示され、オペレーターはこれらをチェックすることで、ノミ先が触れた岩盤のアタリと余掘り状況を確かめられる。

 T-アタリパーフェクターの導入により、オペレーターはモニター画面を見ながら油圧ブレーカーを操縦でき、作業員が切羽周辺に近づくことも不要とし、これまでオペレーター1人と作業員1人で行っていた業務がオペレーター1人で実施可能となり、50%の省人化を実現する。

 大成建設は、山岳トンネル工事「大野油坂道路荒島第2トンネル西勝原地区工事」で、T-アタリパーフェクターの実証試験を実施した。試験では、オペレーターのみで建機を用いて、アタリの削り作業を行い、安全性や生産性を調べた他、従来方式による通常掘削と新システムを適用した際の余掘り量を比較した。結果、T-アタリパーフェクターを使用することで、アタリを確実に排除し、追加作業が不要となり、余掘り量は従来方式と比較して約15%減らせた。併せて、コンクリート吹付量の低減によるコストダウンとCO2排出量の削減も可能なことが明らかになった。

野油坂道路荒島第2トンネル西勝原地区工事での「T-アタリパーフェクター」による施工 出典:大成建設

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