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» 2020年09月15日 09時00分 公開

山岳トンネル工事:「切羽掘削形状モニタリングシステム」を現場試行、掘削の余掘りと余吹きを20%低減

西松建設らは、あたり箇所が重機の運転席にあるモニター画面のヒートマップで確かめられる「切羽掘削形状モニタリングシステム」を広島県三原市で施工中の木原道路内畠トンネル工事に適用し、トンネル掘削の余掘りと余吹きを20%低減した。

[BUILT]

 西松建設やビュープラス、ジオマシンエンジニアリングは、山岳トンネル切羽掘削面の整形作業の安全性向上と効率化を目的として2019年2月に開発した「切羽掘削形状モニタリングシステム」の現場試行を広島県三原市で施工中の木原道路内畠トンネル工事で実施した。

残コンの削減にも貢献

 山岳トンネル掘削工事では、坑内の最先端部である切羽(きりは)で、発破後に掘削設計の断面線よりも内空側に残った地山を掘削する整形作業(あたり取り)を行う。これまで、あたり取りの際は作業員が切羽直下に立ち入り、目視で整形が必要な箇所(あたり箇所)を判断してレーザーポインターなどで重機のオペレーターに指示を出していた。

従来のあたり取り作業 出典:西松建設

 しかし、切羽は、地山が露出しており、岩塊の抜け落ち(肌落ち)が発生すると、死傷災害につながる可能性が高い危険な場所であり、切羽直下への進入はリスクが高い。加えて、厚生労働省は「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策にかかわるガイドライン」で、切羽への立ち入りを原則禁止している。

 そこで、西松建設では、あたり取り作業の安全性向上と効率化を目的に、高速3Dスキャナーを使用して切羽掘削の断面を計測し、設計断面と比較することで、あたり箇所を迅速に可視化する掘削形状モニタリングシステムを開発した。

掘削形状モニタリングシステムのイメージ 出典:西松建設

 掘削形状モニタリングシステムは、発破とずり出し完了後の切羽で、あたり取りを行うブレーカなどの重機に搭載した高速3Dスキャナーで切羽の掘削形状を計測する。掘削形状の点群データと設計断面を比較し、設計断面線よりも内空側に残ったあたり箇所を重機キャビン内のモニターにヒートマップ表示させることで、重機のオペレーターが容易にあたり箇所を確かめられる。

広島県三原市で施工中の木原道路内畠トンネル工事での現場実証 出典:西松建設
あたり箇所のヒートマップ表示 出典:西松建設

 木原道路内畠トンネル工事での新システの現場試行では、重機のオペレーターは、運転席モニター画面のヒートマップ表示を利用して、あたり作業を進めた。結果、問題なく作業を行え、従来のように作業員が切羽直下に立ち入り、目視であたり箇所をチェックする必要が無いことが判明した。

 また、重機に搭載した高速3Dスキャナーで、任意に配置した後方の特殊基準球を自動で探索すると、トータルステーションとの連動が不要となり計測時間を大幅に短縮することも明らかになった。運転席モニター画面から計測開始の指令を出して、結果が表示されるまでは、50秒程度で済み、掘削サイクルに影響を与えることなく、効率的なあたり作業を実現した。

 さらに、切羽で取得した掘削形状の点群データから余掘り量を各切羽で算出し、発破パターンを見直しすることで、掘削余掘り量を最小化することが可能だと分かった。余掘り・余吹き量を最大でシステム導入前と比較して20%削減した。

切羽掘削形状モニタリングシステムのクラウドデータベース 出典:西松建設

 予定吹付コンクリート量や掘削土量などの各種施工データは、トンネル坑内ネットワークを経由して、クラウドサーバに送られるため、関係者が場所を選ばず施工状況を確認するのに役立った。加えて、予定吹付コンクリート量の施工データを活用し、コンクリートプラントで製造される吹付コンクリートの余り、いわゆる残コンを削減した。

 今後、現場試行で発覚した新たな課題を踏まえて、ステムの改良を進めるとともに、高速3Dスキャナーを活用したインバート掘削管理システムや切羽面の押出し計測、重機の姿勢制御などの技術開発を進め、山岳トンネル施工の無人化・自動化の実現を目指していく。

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