アーキ・キューブの大石佳知氏からは、デジタル測量や写真測量が建築文化財の維持管理にどのように生かれているのかを紹介。
その基礎となるのはBIMモデルだ。建築文化財をスキャンした点群データをBIMで分析・保存すると、その後の管理や運用が柔軟に行えるようになる。
例えば、デジタル測量や写真測量を基にBIMモデルを作っておくと、その後必要な部分に対して行った触診の結果もBIMモデルに追加できる。BIMモデルは、当然ながらその特性として、部材ごとに属性をデータベース化している。このため、触診で得た情報もBIMのデータに蓄積可能になる。
大石氏は、「今後このデータを構造設計士や設備設計士などの専門家と共有したり、環境性能や安全性の解析に用いたりすることが可能になる」と話す。さらに、現在は紙で保存されている修理報告書も、BIM上で情報の蓄積や管理をすることで、今後の改修や維持管理の基礎資料として使えるようになる」とその可能性を示した。
この他、大石氏はBIMデータを活用した3Dプリンタによるスケールモデルについても触れた。提示したモデルは100分の1だが、使用する素材の強度やプリンタのノズルピッチなどを考慮し、BIMデータの調整が必要なことを紹介した。
講演では締めくくりに、北尾氏がデジタル測定技術の展開について総括した。北尾氏は、近代産業遺産の建築物の管理にクイックスキャンを利用することで、保存・活用の可能性を広げられるとした。北尾氏は「その結果、循環型社会という人類が共有している課題に向け、建築物の保存・活用がより進むのではないか」と語り、講演を終えた。
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