2019年4月から段階的に施行された働き方改革関連法を受け、場所にとらわれない新しいワークスタイルが身近になったことに加え、新型コロナウイルス感染症が世界の至る所で影響を及ぼし、with/afterアフターコロナ時代の新しい生活様式が生まれ、建設業や製造業などあらゆる産業の働く環境は一変した。この急激な変化に対応するためには、デジタル変革にどう取り組むかは、業種や業界を問わずもはや不可避の課題となっている。
オートデスクは2020年10月28日、建築・エンジニアリング・建設(AEC)及び製造業の製品設計と製造(D&M)向けに、オンラインセミナー「革新技術がもたらす未来の働き方(Future of Work)」を開催した。
セミナーでは、Autodeskの米国本社よりエグゼクティブが「未来の働き方」のテーマに関するトレンドや影響、ニューノーマル時代の働き方に関する取り組みを紹介。パネルディスカッションでは、オートデスクの国内ユーザー企業として大和ハウス工業とヤマト科学をパネリストに招き、ニューノーマル時代を生き抜く施策を議論した。
冒頭のキーノートセッションでは、米Autodesk ビジネス戦略&マーケティング担当 CMO兼上級副社長 リサ・キャンベル氏が建設・製造分野で自動化が加速していることを踏まえ、対応するためにはどのような働き方が必要かを提案した。
全世界で、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが起きたことに伴い、これまで想像できなかったほどに、産業分野での“自動化=オートメーション化”が加速している。「要因としては、感染を防ぐために施工や製造の現場では、集団での密や感染の防止策といった安全性が、今まで以上に重視されていることが自動化/無人化を後押ししている」。
一方で、新型コロナにより、市場は落ち込むかに思われたが、建設市場では(グローバルで)1日あたり1万3000棟もの建物ニーズが増えている。「これまでは都市化が進むと予想されていたが、郊外へ移り住む人々が増加した。都会志向でも郊外志向でも、建物だけでなくインフラも増々必要になるだろう。言い換えれば、仕事の需要も増大することを意味する」。
しかし、仕事量が増えたとしても、スキルを持った人材が足りていない現状は変わらない。製造業界では1000万人の人手不足に陥っており、建設施工の現場でも、約80%の企業が技術保有者を見つけられない実情があるとキャンベル氏は指摘する。
日本市場については、「自動化に抵抗することなく、柔軟に対応できている」と評価し、裏付けとしてマッキンゼーなどのリサーチ会社のデータを参照した。複数の調査結果をまとめれば、日本では少子高齢化が進み、全人口のうち、労働人口は60%ほどしかなく、解決策として自動化が歓迎されており、現存する仕事の56%は自動化または無人化されると予測している。キャンベル氏は「2030年までに150人分の人手が不足すると予想されており、自動化の恩恵は多大。しかし、新たに創出される業務のために、同年まで1200万人が新たなスキルを取得しなくてはならない」と新たな課題が生まれることにも言及した。
Autodeskがスキル取得のために不可欠とするのが、技能向上と再教育への投資。スキルギャップを縮めるため、豊富な資格試験と認定制度のトレーニングを用意している。「手ごろな料金で、誰でも簡単に利用可能で、多様なニーズや個人の仕事に合わせ、パーソナライズされた情報を提供することで、適切な資格取得の支援を行っている」。
また、常にトレーニングができる環境として、Fusion360上にeラーニングを展開。機能の一つコマンドマップでは、Fusion360で設計した場合、各種操作や機能をどのように使ったかの履歴が残り、円グラフでスキルの獲得状況が一目で分かる。建設または製造の設計スキルが業界標準に達しているかや他の設計者・エンジニアと比べてどの段階にあるのかを確認するだけではなく、その先のスキルを伸ばすために推奨されている機能紹介の動画も表示される。
さらにAutodeskの強みとして、世界中の政府機関や教育機関と、日々技術者のためのスキル習得について検討を重ねていることがある。各機関との連携により、行政の補助金などで技術者にスキル向上の意欲を持つ機会を与え、ユーザーが無理のない費用で、真に価値のあるスキルを身に着けられる横に連携した教育体制を構築できる。
結びにキャンベル氏は、オンデマンド製造の事例として、オランダ・ロッテルダム港での3Dプリンタを用いた船舶部品の製造をはじめ、人の8倍を超えるスピードで掘削を行う施工ロボット、現場監視を行うボストン・ダイナミクス製の4足歩行ロボットなど、ICT導入が製造・建設を問わず進展していることを示し、そのために、Autodeskが次世代の技術者育成で果たす役割を改めて強調して締めくくった。
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