オートデスクと大手ゼネコン4社らは、これまで運用ルールがバラバラで鉄骨加工会社(ファブリケータ)などの負担となっていた構造BIMを標準化する取り組みの一環として、鉄筋コンクリートの柱と梁の構造用ファミリをリリースした。提供するファミリは、2018年末に公開した鉄骨に続くもので、RCの構造を生産・施工するために必要なBIMの部材モデルについて、建設会社と鉄骨ファブリケータなどとが、異なる会社間でも円滑に利用できるように標準化を行った。
オートデスクは2020年7月16日、大林組、清水建設、鹿島建設、大成建設などとともに、BIMソフトウェア「Autodesk Revit 2020」向け構造用ファミリを公開した。同日には、4社を代表して大成建設の技術担当者もプレゼンを行ったオンライン説明会を開いた。
RCファミリの提供に先立ちオートデスクは2018年12月4日、大林組、清水建設、大成建設らの協力を得て、Revit 2019向けの鉄骨構造に対応する構造用ファミリをオートデスク公式Webサイトで発表している。
これまで構造用ファミリは、各社で異なるソフトウェアや社内ルールに基づき作成していたため、各部材のモデルに含まれる属性データが違うことから、設計から生産、施工、維持管理までの各業務で有効に活用されていなかった。
そこでオートデスクと大手建設会社は、鉄骨の構造を生産・施工するために必要な設計データの種類について、設計事務所や建設会社など会社が違っても、同一条件で利用できるように標準化して、共通のパラメータを使用することで効率的な構造設計の環境整備を目指した。標準化により、設計情報をそのまま鉄骨ファブ会社などが生産工程で使えるようになるため、複数の組織間や業務プロセスをまたいだ生産性向上が期待される。
その後、パラメータ設定の共通化には、鹿島建設も参加し、新たにRC構造にも応じたファミリを公開するに至った。
オンライン説明会では、オートデスク 技術営業本部 AECテクニカルスペシャリスト 林弘倫氏が、構造設計をバックアップするAutodeskの構造BIMソリューションを紹介した。
林氏は、構造モデルの前提として、「これまで書いてきた2次元の構造図と構造解析モデル、国土交通省の建築BIM推進会議で策定されたBIMガイドラインでの構造BIMモデルの基準(構造平面情報、構造軸組情報、部材断面情報)は、全て同じ情報を保持していなければならない」とした。
構造設計者は現状では、意匠図を基に、構造計算ソフトで3Dの解析モデルを作り、伏図、軸組図、リストを個別に手作業で図面化している。解析モデルをそのままBIMモデルに活用することで、2次元の伏図/軸組図/リストの自動出力が実現すれば、各図面を描く手間が省け、作業時間で20時間、おおよそ3分の1程度に短縮される。
構造関連で用意されているAutodeskのソリューションとしては、「Architecture,Engineering&Construction(ACE) Collection」のなかでも、RevitとRevitの日本仕様のアドオンが相当する。日本仕様アドオンは、構造・意匠・設備の3分野を統合したS造7階建ての標準的なオフィスビルのサンプルが既に提供されている。
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