消防庁が発表した「令和元年版 消防白書」によると、2018年は「放火」と「放火の疑い」が出火原因の火災は、全火災の12.5%に上った。また、人為的原因が多く防ぎにくい傾向があるガソリン火災では、消火器やスプリンクラーなどの従来の設備を使った初期消火では十分に対処できなかった。解決策として、ヤマトプロテックは自ら消火する建材「K/SMOKE PANEL」を開発した。
総合防災メーカーのヤマトプロテックは同社のHPで、自ら消火する建材「K/SMOKE PANEL」を2020年10月1日に発売したことを発表した。
同社は、2018年に煙状の消火薬剤「エアロゾル」を用いた消火装置の国内生産をスタートした。その後、エアロゾルが、近年商業施設と公共施設で頻発しているリチウムイオン電池火災の消火にも有効だと考え、エアロゾルの形状に関する研究に着手した。
形状は、リチウムイオン電池がコンパクトで多様なスペースに置けることに配慮し、隙間に設置できる薄いシート状に決定して、実用化に向けてさまざまなリチウムイオン電池で火災実験を行った。実験を重ねて、最適なフォルムに仕上げ、K/SMOKE PANELが完成した。
K/SMOKE PANELは、火災時に急速な燃焼を抑え、素早く鎮火するカリウムを主成分とした建材で、300度を超えると自動的に煙状の消火薬剤が放出され、無人で迅速に消火し、人体に無害だ。また、オフィスビルや病院、駅、学校、エレベーター、電車、バスといった狭い空間の壁などに取り付けられる。
同社はK/SMOKE PANELの性能を確かめるために実証実験を行った。実験では、サイズが2(幅)×2(奥行き)×1.6(高さ)メートルの模型に、消火薬剤を4.3キロ内包したK/SMOKE PANELを配置し、1リットルのガソリンを散布し引火した。結果、約15秒後で消火して、消火薬剤は約20%しか使用されておらず、ガソリンは半分の500ミリリットルが残った。
ヤマトプロテックは現在、全ての可燃物にK/SMOKE PANELを貼り付けて自己消火機能を搭載することを標準化し、各国で消火設備の代替設備としてK/SMOKE PANELにすることを最終的な目標に掲げている。今後は、日本国内の消防法と国際規格への適合を目指す。
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