近年のトレンドでもあるSDGs(持続可能な開発目標)といった環境配慮の観点では、Autodeskユーザーは建設のAECで47%、製造のD&Mで52%もの高い関心があるという。BIMソフトの「Revit」やiPadの3Dモデリングアプリ「FormIt」とリンクしている建物性能解析ソフト「INSIGHT」では、ビル単体やビル群の設計モデルをベースに、CO2排出量や電力、日照条件などを分析。他にも、部材の製造工程でも廃棄物を少なくしCO2削減に貢献するものや製造業に対して材料使用量を抑制するジェネレーティブデザインやアルゴリズムのツールをAutodeskでは多数用意している。
まとめで、スパイカー氏は、「クラウドベースでどのように生産性を向上させ、従業員をスキルアップして、環境配慮などの諸問題をどう解決するかが将来に向けたカギとなる。人口減少と担い手不足で、こうした壁に至急取り組まなければならない日本は、もし成し遂げれば他の地域の手本にもなり得る。そのために、Autodeskは持続可能な未来の構築をサポートしていく」と語り、締めくくった。
パネルディスカッションでは、大和ハウス工業と、創業から130年以上の歴史を有し、理科学機器の製造・販売や研究施設そのものの設計・施工を行うヤマト科学の2社のデジタル推進担当者が、これから設計者や施工者の働き方がどのように変化し、どのような対策を検討しているのか、意見を交わした。
大和ハウス工業 次世代工業化開発室 理事の芳中勝清氏は、「当社はハウスメーカーとしてだけではなく、今ではゼネコンの領域に加え、ホテルやホームセンターも扱っている。私自身は、これまで設計を中心に担当し、商品開発や建築のデジタル化を推進してきたが、今は“次世代の工業化建築”を標ぼうし、業務プロセスの改善や未来の働き方の構築などを実現させるべく、デジタルトランスフォーメーションを加速化させ、次世代のデファクトスタンダード構築を目指している」と自己紹介した。
同社 建設デジタル推進部 次長 宮内尊彰氏は、「建築系と構造のBIMに加え、建築業のデジタル化として“デジタルコンストラクション”を担当している。建設業を取り巻く環境を振り返ると、量から質へ、新築以上に維持・修繕・補修の活性化、労働者の減少、そして新型コロナに伴う新しい働き方が検討課題となっている」とした。
大和ハウス工業では2017年からBIM化に着手し、現段階でBIM構築はほぼ完了し、2019年より、BIMに紐(ひも)づく全ての建築データを連携させて利活用し、現場の遠隔監視や次世代の工業化建築などを実現させるデジタルコンストラクションの段階に進んでいる。
一方、ヤマト科学 執行役員 研究施設カンパニープレジデント 松村勝弘氏は、自身のプロフィルについて、「研究所の実験什器や機器を販売している以外にも、プランテック総合計画事務所、アズワン、サンメディックス、ヤマト科学の4社が共同出資して創設した一級建築士事務所のラボ・デザインシステムズで、研究施設・病院施設を専門とする建築設計とコンサルを担当している」と語った。
ヤマト科学では、5年前からAutoCADで建築部門と製造部門のデータを一元管理することに取り組んでいる。さらにBIMに関しては、建築設計の会社に製品のファミリを提供して、部屋のレイアウトに活用することも視野に入れている。
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