長谷工が障壁を乗り越え、マンションの“ライフサイクル全般”でBIMを活用できたワケAutodesk University Japan 2019(1/5 ページ)

「Autodesk University Japan 2019」の中から、建築業向けのセッションとしてセッティングされた長谷工コーポレーションの講演を振り返る。長谷工ではマンションのライフサイクル全般でBIMモデルを活用し、一気通貫での生産性向上を実現している。しかし、BIMを導入した当初は、膨大な手間が掛かっていたというが、これを解消すべく、Revitとオペレータをつなぐアドオンツール「H-CueB」を独自開発した。長谷工版BIMの要ともいうべき、H-CueBを徹底解剖する。

» 2019年11月26日 05時17分 公開
[川本鉄馬BUILT]

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 オートデスクは2019年10月8〜9日、東京都内でプライベートイベントである「Autodesk University Japan 2019」を開催した。その中から、建築業向けのセッションとしてセッティングされた長谷工コーポレーション(以下、長谷工)の講演を紹介する。登壇者は、長谷工コーポレーション エンジニアリング事業部 統括室長・堀井規男氏。

 講演のテーマは「設計施工一貫BIMシステム『H-CueB』について」。H-CueB(エッチキューブ)は、長谷工が抱える課題を解決するために、構造計画研究所と共同開発した“長谷工版BIM”向けの自動化ツール群だ。

 堀井氏は、H-CueBの導入によって変化した新しい業務フローを作業の各フェーズとコスト面から解説。同時に、H-CueBを核にした長谷工版BIMの未来像も提示した。

「BIMを導入したもの、CADに対して4.8倍の手間が」

長谷工コーポレーション エンジニアリング事業部 統括室長・堀井規男氏

 長谷工は、1937年の創業以来、マンション建設に特化した準大手ゼネコンで、売上高は8910億円(2019年3月期実績・連結)に上り、マンションの累積施工戸数は64万5000戸(2019年8月末現在)に達した。

 堀井氏はBIM導入について、2008年から検討を始め、本格的に採用を進めたのが2012年だったと振り返る。同年4月には社内に「BIM推進室」を発足し、2014年には設計業務をBIMで行う「BIM設計部」も設置して、同年に実施設計でBIM初の案件を手掛けた。その後、2017年には「建設BIM推進部」を立ち上げ、2019年6月時点で東阪合わせ、132件の実施設計を完了させ、うち57件が竣工済みだという。

長谷工コーポレーションにおけるBIM推進の歩み

 長谷工は、マンション事業で、事業計画から、設計、施工、販売までのフロービジネスに一貫して携わり、さらに管理、大規模修繕、リフォーム、リノベーション、建て替えのストックビジネスに至るまで、トータルでビジネスを展開している。長谷工版BIMでは、このような強みを踏まえ、単に設計・施工だけではなく、販売や管理、維持管理などのマンションのライフサイクル全体でBIMを活用することが最初から想定されていた。

長谷工版BIM 5つのキーワード

1.マンションに特化(部材が限定され環境構築が容易)

2.高い設計・施工比率(過去10年平均約95%、施工メリット最大化)

3.マンションに関するトータルビジネス(BIM活用の幅が大)

4.協力会社との連携(部材や施工手順の標準化に取り組みやすい)

5.工業化・標準化への取り組み(パーツ設計であるBIMを先取り)

長谷工版BIM 5つのキーワード

 しかし、実際にBIMを使い始めた当初は、いくつかの問題が生じたという。

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