大和ハウスとヤマト科学がニューノーマル時代のDXを議論、未来の働き方を照らすAECセミナーオートデスク織田社長「ITは道具ではなく、もはや共同設計者」(4/5 ページ)

» 2020年11月09日 06時15分 公開
[石原忍BUILT]

with/afterコロナのDXはどうあるべきか?

大和ハウス工業 次世代工業化開発室 理事 芳中勝清氏

 芳中氏は、コロナショックを受けた今後の市場見通しについて、「住宅の着工戸数は減っていくが、それ以上に現場の職人はもっと速いスピードで減少してしまう。そのため、必然的により少ない人数で現場をこなしていくが求められる。当社としては、創業以来から掲げている建築の工業化をより高い次元に引き上げなくてはならない」と語った。

 宮内氏は、「デジタル化する前のアナログルールが変革した。建設業は図面に縛られることは多かったが、紙からの脱却が起きている。とくにBIMの特性として、図面のように読み解く知見も必要としないので、同じ情報を誰もが共有できる。しかし、建設業界でも機密性の高い情報は存在し、情報共有を考えると、データセキュリティはこれからの検討事項になる」とした。

 BIMの補足として芳中氏は、「まだ日本のBIMは黎明期にあり、オープンイノベーションで各社が相互にボトムアップをしていくことが理想だ。隠すことなくオープンだからこそ、市場全体のデジタル化に貢献することになる」と提言した。

 ヤマト科学ではDXを見据えた施策として、1つのデータを企画・設計から製造までつなげることで、国内だけではなくベトナムの設計部門とも連携して、建築・製造の横断的な全体効率化を図っている。

 「建築・製造・企画開発でバラバラだったが、統一したソフトにしことで全体のコストも下がった。しかし、製造業のため、自分たちの設計だけで完結してしまいがちで、外部とは連携することがなかなか無い。これからは、社外のメーカーや設計・施工・製造など多様なステークホルダーが使えるように、オープンベースにしていく必要がある」(松村氏)。

ヤマト科学 執行役員 研究施設カンパニープレジデント 松村勝弘氏

 データ一元化による思わぬ利点と松村氏が口にしたのが、「新型コロナの感染防止により、山梨県の製造部門と面談できなくなってしまった。だが、統合した1つのデータを共有しているため、企画で考えたものが、製造まで正確に伝わっていくことができている」と有効性を示した。

 withコロナの対応策では、「展示会への出展が困難になり、ショールームにも顧客を連れてくることが難しくなった。そこでヴァーチャルで製品を見てもらうべく、教育機関とともに、製品の見せ方をはじめ、使用方法のレクチャー、その先には施設内の設計やモデリングも範疇(はんちゅう)に入れたVRの研究を始めている。5Gの本格展開ともなれば、VRの大容量データを遠隔で顧客に転送して、製品提案もよりスムーズに行えるようになるはず」(松村氏)。

ヤマト科学が構想するVRを活用した働き方改革

デジタル人材を育成するには?

大和ハウス工業 建設デジタル推進部 次長 宮内尊彰氏

 技術的革新を下支えする人材の育成に関して、大和ハウス工業の宮内氏が属する建設デジタル推進部では、当初からBIM教育に力を入れ、社員が講師を務めて、協力企業に対しても無償でデジタル対応のトレーニングを行っている。さらに、Autodeskと2018年8月に締結した戦略提携により、海外のグループ企業にも教育の輪を広げている。「単にIT人材を育てるのではなく、世界の先端技術に目を向けられるグローバルな人材を求めていきたい」(芳中氏)。

 対してヤマト科学は、最近はカタログのフルCGの製作も手掛けているベトナムの拠点でも、技術者の強化を進めており、教育手法としては「まず1人の技術レベルを高め、その人が中心になって、周りに波及する形をとっている。日本の設計者には、図面を描く人や作業する人を周りに置いて、自身は(とりまとめ役の)コーディネーターになってもらいたい」(松村氏)。

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