続いて、筆者がビル・施設管理をされているユーザーから聞いたICTの活用方法で特徴的だった3つの例を下記で紹介する。
・植え込み、芝生の土壌水分量モニター
農業用デバイスを、施設の緑化管理のために用いたケースで、土壌水分量を遠隔で継続的にモニターすることで緑化管理業務の省力化を図った。現在、自治体による施設緑化の普及促進制度化で、緑化管理は施設管理者にとって重要な業務の1つになっている。
・看板の傾斜検知
鉄塔傾斜検知用デバイスを、看板管理のために利用した事例。看板は風雨や強い日射しなどで腐食し、ゆるみ、亀裂が発生して、経年劣化で落下の危険性がある。看板の設置や管理は各種法令で制度化されているが、所有者による日常点検と専門業者による定期点検だけではなく、ICTを用いて傾斜を遠隔で継続的にモニターすることで、リスクを早期発見できる。
・近隣敷地への漏れ光検知
照明設備の点灯状態をモニターする照度センサーデバイスを、近隣敷地や農地などへの漏れ光検知のために使用したケース。環境省の光害ガイドラインでも、施設管理者には良好な照明環境を実現するための努力を行うことが求められているが、漏れ光を継続的にモニターすることで、無用な漏れ光抑制を実現した。
上記のようにサービス提供者側の想定範囲にとどまらず、利用者ごとの課題観点によって、さまざまな活用方法があるのもIoTの特徴だ。
さて、LPWA通信を用いたIoTに関するソリューションは、各社から提供されているが、単一の通信規格を基にしたIoT技術だけでは顧客の課題に応えることが難しくなってきている。
数年前では比較的シンプルな要望が多かったが、現在は要件が多様化し、複雑化している。例えば、屋内と屋外、敷地内と公共エリア、移動体と固定物、セルラーサービスエリア内とエリア外、大容量の映像と多数のセンサーデータなどをシームレスにつなぐICTサービスがユーザーから求められている。
本連載の第1回でも記述したが、各通信規格には通信速度や伝搬距離などで特徴がある。それぞれの特徴を効果的に組み合わせて、カバーし合いながら、マルチコネクティビティとして提供できる形が今後は望まれる。さらに、外部サービスやアプリケーションとスムーズに連携し提供できることでスピーディーに環境構築が進められるICTサービスが求められている。
上記のようなICTサービスを実現したのがNECネッツエスアイが提供する「Symphonict プラットフォーム」だ。Symphonict プラットフォームは、多様なコネクティビティをはじめ、監視や通知などの共通機能、データ蓄積といったプラットフォームサービス基盤、サービス開発API、外部クラウドAPIなどで構成されている。
今後は、Symphonictプラットフォームようなマルチコネクティビティを前提としたプラットフォームの活用で、利用者にとって新たな価値創出が実現すると考えている。
連載第2回では、コロナ禍を受け、ICTの存在意義が変わったことやコロナ対策となるZETAの活用方法および施設屋外での利用方法、マルチコネクティビティの必要性について述べた。
次回はZETAのパッケージサービス、導入事例やスマートビルディングに関する実証実験、そして将来性について解説する。
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