堀口氏によれば、足元の市況は、「高度経済成長期に建てられた建物の老朽化や相続の増加によって、解体需要は増加している。2020年時点で1億2000万平方メートル(76万件程度)の解体工事が行われている計算で、戸数ベースで2040年までに2237万戸の解体ストックが予想される」と話す。
とくに解体業界は他業界と異なり、工事自体を先送りはできても、空き家や老朽化のために、いずれは誰かが着手しなければなければならない。そのため、将来の解体工事数は増えることはあっても、減ることはないと指摘する。
クラッソーネが2020年2月に実施した将来住まいをどうするのか選択肢を考える「住まいの終活」に関するアンケートでは、現状で「対応を決めている」の回答が9.8%だったのに対し、「何もやっていない」が54.9%と半数を上回った。同時に、費用面や相談相手がいないなど「不安を抱えている」が63.1%で、将来に不安を抱きつつ住まいの就活への備えがまだ未着手な施主が多いことが判明した。
また、新型コロナウイルスが解体業に与えた影響についての施工会社への調査では、「売上減少見込み」が91.2%となり、要因としては「ハウスメーカーや工務店経由の工事減」が71.9%でトップ。他に、「個人から直接受ける工事」や「不動産会社からの工事」も多かった。
「長期トレンドでみても、建設会社からの依頼は、新築工事の伸び悩みとともに減少していく見通し。くらそうね利用者に解体工事の動機を聞き取ったところ、2019年までは空き家の処分が30%ほどだったが、2020年には53%と伸長し、新築に伴う建て替えの22%を大きく上回った」(堀口氏)。
しかし、その一方で、くらそうねの様な「一括見積もりサイト経由の工事」は、減少幅の予測が18.2%にとどまり、さらに裏付ける形でGoogle Trendsの検索キーワードで「解体工事」は、緊急事態宣言中を含む2019年9月〜2020年8月の推移でも落ちず、オンラインにはほとんど影響していないことがデータにも表れている。
これからの市場が拡大していく解体業界のキーワードと堀口氏が説明するのが「法改正」。ここ数年、社会で浸透してきているSDGsの観点から、廃棄物の適正処理や石綿(アスベスト)による人体被害の抑制を目的とした法整備がさらに進んでいくことが想定される。
既に2020年6月には、大気汚染防止法の一部を改正する法律案が成立し、「石綿障害予防規則(石綿則)」も改定され、全ての石綿含有建材への規制対象が拡大されることとなった。除去工事の隔離義務や工事方法も2020年10月以降に順次施行され、2023年10月からは厚生労働大臣が定める講習を修了した者のみが、事前調査の有資格者として認められるように制限が掛かる。そのため、調査者の確保や育成が課題となることは明白で、調査費用の高額化も懸念されている。
また、これまでは明記されていなかった施主の義務も、調査費用や事前調査への理解を求めることを発注者責任として明文化されている。堀口氏はまとめで、「安全性と環境配慮のための法改正が進み、発注者の社会的責任も問われるようになっていくだろう」として、クラッソーネでは発注者・工事会社の双方に対して、正確な情報発信や啓発に努めていく方針を示した。
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