鹿島建設は、沖電気工業と共同で、広範囲に配置した複数のグラウンドアンカーで発生した張力を1台の計測機で調べられるシステムを開発した。新システムは、グラウンドアンカーのストランドに組み込んだ光ファイバーのひずみ分布を計測することで、地山内部の変状や経年劣化などに起因するグラウンドアンカーの張力分布で生じた変動を常時把握する。
鹿島建設は、沖電気工業(OKI)と共同で、広範囲に設置した複数のグラウンドアンカーで生じた張力を1台の計測機でリアルタイムに把握できるシステムを開発した。
同社は、光ファイバーを用いてストランドの張力分布を把握する技術「PC張力計測システム」を2017年に住友電気工業やヒエン電工、エスイーと共同で開発したが、PC張力計測システムでは、測定するたび、ストランドに組み込んだ光ファイバーを1本ずつ計測機に接続して測定を行う必要があった。
上記の面倒な作業が必須だったため、複数のグラウンドアンカーで発生した張力を連続的に測ることが難しく、大雨や地震で生じた法面の変状による影響やグラウンドアンカーの劣化をリアルタイムに検知できないことが課題だった。
解決策として、鹿島建設とOKIは、PC張力計測システムを改良し、新システムを開発した。PC張力計測システムでは、グラウンドアンカーから延伸した光ファイバーを1本ずつ直接計測機に接続していたが、新システムでは、複数の光ファイバーを切り替え装置を介して計測機につなげることで、複数のグラウンドアンカーで発生した張力をリアルタイムに測れる。
1台の計測機で、最大16本のグラウンドアンカーで生じた張力を約20秒間隔で連続計測でき、法面の安全性をリアルタイムに把握することが可能。使用する光ファイバーは、最大約5キロまで伸ばせるため、広範囲に設置した多くのグラウンドアンカーで発生した張力を調べられる。計測したデータはリアルタイムにクラウド上に転送し、事務所などの遠隔地でモニタリングが行える。計測機が設定した管理値を超えた値を感知した場合には、クラウド上にアラートを発信するため、事故の予兆を早期に見つけられる。
既に鹿島建設が施工する掘削工事で、各ストランドの長さが約20〜40メートルの仮設用グラウンドアンカー7本に新システムを適用し、2019年9月から2020年3月までの約6カ月間にわたり、グラウンドアンカーの張力を連続で測った。
結果、一部の仮設用グラウンドアンカーで、掘削の進捗に起因すると考えられる張力の増加を明らかにした。該当するグラウンドアンカーの張力分布を確かめ、経時的な変動を分析したところ、計測開始時と比べて自由長部の張力が掘削により約8%増加しているのに対し、アンカー本体部の張力分布には大きな変動が無いことが分かった。
また、張力は増加する傾向にあるが、地山への定着は計測開始時の状態を維持しており、仮設用グラウンドアンカーが健全な状態だと確認した。
今後、新システムを施工時の挙動監視だけでなく高速道路をはじめとしたさまざまな法面の維持管理で適用を検討するとともに、光ファイバーを用いた計測技術の開発を進めていく。
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