鹿島建設は、オープンケーソン工法で硬質地盤下での掘削を可能にする水中掘削機を開発し、既に切削試験で掘削性能が証明されている。
鹿島建設は、加藤建設、アジア海洋と共同で、オープンケーソン工法で用いる新たな水中掘削機を開発した。これまで困難だったケーソン刃口部直下での硬質地盤の掘削が容易になったことで、平面形状や深度、対象地盤などオープンケーソン工法の適用範囲が拡大する。
オープンケーソン工法は、ケーソンと呼ばれる円形や矩形(くけい)といった筒状構造物の内部を、地上からグラブバケットを使用して水中掘削し、ケーソン自体の重量及び圧入アンカーによる沈下荷重を利用して、ケーソンを所定の深さに沈設させる工法。
この工法では、地下で有人作業を必要としないなど、安全性に優れる一方、掘削地盤が硬質な場合は、ケーソン刃口の直下を掘削しないとケーソンが沈下しないという課題があった。しかし、バケットがケーソンに接触して破損する恐れがあるため、刃口部直下は直接掘削することができず、沈設前に地上から刃口部の硬質地盤を、掘削がしやすい砕石などに置き換えなければならない。そのため、適用範囲が限定され、コスト増加や工期の延長につながっていた。
新開発の掘削機は、通常のグラブバケットでは直接掘削できない硬質地盤が出現した時に、地上部から吊(つ)り下げて投入し、ケーソン刃口部直下の沈設に必要な範囲を掘削する。また、ケーソン中心部の硬質地盤を先行削孔して緩めることで、グラブバケットでの掘削作業の効率化が図れる。
さらに、掘削機で掘削土をケーソン中心側に集めれば、水中サンドポンプやグラブバケットなどを用いた地上への効率的な搬出が可能になる。
掘削機の揚重や移動は、通常のケーソン工事で使用する掘削設備のクレーンがそのまま使えるため、機動性に優れ、ケーソンの規模や平面形状に限定せず配置できる。掘削時の反力を自重で保持する機構により、ケーソン本体に機械を固定せずに済み、メンテナンス時には地上への引上げがスムーズに行える。
施工に際しては、掘削機の設置深度や平面位置、姿勢を各種センサーで把握し、高性能水中音響カメラなどを用いて、高い精度での掘削が実現する。
掘削機に用いるカッターヘッドは、一軸圧縮強度5N/mm2(ニュートンパー平方ミリメートル)程度の硬質地盤に対応。2020年3月の模擬地盤を使った切削試験では、掘削性能を確認している。これまでのオープンケーソン工法で、懸念材料となっていた刃口部直下での全ての深度で事前に砕石への置換えることが不要となり、コストダウンと工期短縮が見込める。
今後、鹿島建設は、水中での検証試験を行いつつ、周辺技術の開発も進め、実工事への早期適用を進めていくとしている。
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