鹿島建設は、全ての建築現場に導入している施工管理支援サービス「Buildee」(ビルディー)の機能を活用し、各建設現場の労務稼働状況などを即時に知ることができる体制を実現した。これにより、業務の効率化や建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及を進めるとともに、2018年に策定した「鹿島スマート生産ビジョン」のコアコンセプト「管理の半分を遠隔で」の実現に拍車をかけている。
鹿島建設は、各職種の労務稼働状況や緊急度合いを、支店や本社管理部門でリアルタイムに把握する仕組みを構築した。鹿島建設の全ての建築現場に導入している施工管理支援サービス「Buildee」(ビルディー)の機能を活用し、各現場で記録される技能者の稼働データを加工・分析することで、これを実現。Buildeeの活用で、技能者不足に起因する工程遅延や品質の低下に早期に対策を講じるとともに、建設キャリアアップシステム(CCUS)とのデータ連携も図り、2018年に策定した「鹿島スマート生産ビジョン」のコアコンセプトである「管理の半分を遠隔で実施できる体制」の推進につなげるという。
鹿島建設の建築現場では、多くの協力会社が混在して作業している。それぞれの作業内容や技能者の人数、使用する仮設設備などを協力会社間で情報共有し、安全かつ効率的に作業を行うために、日々の「作業間連絡調整会議」は欠かせないという。
鹿島建設では1990年代から、作業間連絡調整会議の効率化に向けたICTツールの開発に取り組み、2013年に「e-現場調整Pro」を開発した。2017年には、これを基にイーリバースドットコムが鹿島建設の全面的な支援のもと開発したBuildeeを、全ての建築現場に導入完了した。
従来の作業間連絡調整会議では、協力会社の職長が手書きで作業予定を記入していたが、Buildeeの導入後は、スマートフォンなどの端末から場所を問わず作業予定を入力し、ICTを活用した効率的な作業間調整を行っている。また協力会社においても、自社が入場する現場の作業内容や作業人数を社内に居ながらに確認でき、さらにそれらを容易に集計できることから、Buildeeは元請だけでなく、協力会社の業務効率化にも寄与しているという。
加えて、鹿島建設の現場では、各協力会社の職長が翌日の作業予定や技能者の予定人数を、また作業当日には実際に作業を行った技能者数をBuildeeに入力することで、これらのデータを加工・分析して、全国の労務稼働状況を支店や本社管理部門でリアルタイムで可視化できる。また、このデータに付随している属性情報から、それぞれの職種・地域・現場の集計も容易に行うことも可能だ。
Buildeeを2018年10月から約半年にわたって運用してきた結果、各職種の技能者数の把握だけでなく、予定していた必要人数と比較分析することで、技能者不足を即時に知ることも可能とした。鹿島建設では、鉄骨溶接工や耐火被覆工、ALC工といった、特に技能者不足が懸念される11職種を「クリティカル11(イレブン)」と称し、労務稼働状況を本社・支店にて常に監視しながら技能者不足の兆候をつかみ、早期に対策を講じる体制を整備しているという。
現在、鹿島建設はCCUSの普及のため、全現場にCCUS認定済みのカードリーダーを設置し、技能者の就労履歴登録を推進している。今後はBuildeeと、CCUSが持つ事業者・技能者データとの連携を図り、労務安全に関わる現場の日常管理業務に活用するなど、「鹿島スマート生産ビジョン」のコアコンセプトである「管理の半分は遠隔で」の推進していく方針だ。
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