次に、登壇した東京大学の坂本氏は、「建物には“閉じる機能”と“開ける機能”がある」と述べ、閉じる機能については、建築物が夏に日射を遮断し、冬に日光を取り入れる仕様などを指し、開ける機能は、開口部を開放することで生じる優れた通気性を示すことを紹介した。
両機能をサポートする要素として、換気が大きな役割を果たしているとした上で、空調・換気の室内環境基準に触れた。「建築物衛生法や建築基準法では、居住者の健康維持を目的に、室内環境の基準値を定めている。温度は17〜28度で、湿度は40〜70%。室内の気流は毎秒0.5メートルとされている」(坂本氏)。
空調機器で室内環境基準を維持しつつ、空気の入れ替えが進められる熱交換換気の省エネ性能については、暖房時と冷房時をそれぞれ具体例を交えて解説した。
暖房時に関しては、M工務店が、熱交換型第1種換気設備を4つの地域にある住宅に設置する前に行ったZEHの試算データを使用。資料によれば、熱交換型第1種換気設備を備えた物件は、無い住宅と比べて、4地域の建物全て合わせると、年間4.31ギガジュールの省エネ効果があると判明した。「年間4.31ギガジュールの省エネは、建物における断熱性の増強に相当する値であり、熱交換型第1種換気設備はZEHに有効であることを表している」(坂本氏)。
坂本氏は、冷房時の全熱交換型第1種換気設備の効き目について、「夏の猛暑日を想定して定常試算モデルで割り出したデータによれば、空調機器で室内環境を温度26度/湿度50%以下で設定した場合、冷房の負荷を半減させられることが分かった」と語った。
最後に、「新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、世界中でテレワークを行うビジネスマンが増え、住宅のオフィス化が進行している。これを受け将来は、住居の換気性能が高度化されていくことが見込まれる。メーカーには、除湿や加湿、清浄化といった付加価値のある換気設備の開発を期待している」とコメントした。
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