フレキシブルワークプレースの選択肢のアジェンダでは、オフィスのレイアウトやテレワークなどで導入した施策が効果的に機能していない例を示した。
「例えば、ワーカーのコ三ュニケーション活性化を期待して導入したフリーアドレスが逆にコミュニケーションを阻害しているケースがある。フリーアドレスは、自席を固定しないでオフィス内の好きな場所で仕事ができるようにするが、どこに誰がいるのか分からなかったり、オフィス内で人が密集する場所ができてしまい、カジュアルな会話がしにくいなどの問題が発生する」(石崎氏)。
ザイマックス不動産総合研究所では「ZXY(ジザイ)」というサテライトオフィスサービスを展開しているが、ZXYのユーザーからは「自分のオフィスでは集中する場所がない」ためにZXYを利用するという声が挙がっている。また、サテライトオフィスでのテレワークでは、「集中しすぎて疲れることがある」という声も存在する。石崎氏は「施策を運用しながら、生産性向上などに貢献する最適な取り組みを見つけていくことが大事だ」と語った。
フレキシブルオフィスの海外事例として、イギリス・ロンドンの「TOG(The Office Group)」、フランス・パリの「SPACES」「Multiburo」「SNCF」のオフィスにも触れた。
石崎氏は、「TOGやSPACESなどが展開するフレキシブルオフィスは以前から存在し、当時からサービスレベルやファシリティ、ホスピタリティなどを追求していく方向性があった。TOGやSPACESなどのフレキシブルオフィスで働く人はABW(Activity Based Working:場所や時間を自由に選べる働き方のこと)を実践できていると感じる」と述べた。
ロンドンでは、都市の中心部で賃料が高騰し、若くて優秀な人材が郊外に住む傾向が顕著で、郊外に住む人財を雇用するために、企業が郊外にオフィスを設置する動きが活発化している。「日本でも、人材獲得のために東京の企業が地方にサテライトオフィスを設置するケースがある」(石崎氏)。
東京の場合、オフィスが集中しているのは都心5区(中央区、港区、千代田区、新宿区、渋谷区)だが、都心5区で働くワーカーのうち都心5区に住む住人は約10%で大多数は他の18区や郊外エリアに居住している。「大多数が居住する場所であれば、今後、企業同士が協力して、フレキシブルオフィスを配置する可能性がある」(石崎氏)。
石崎氏は、「本社のオフィスとフレキシブルワークプレースの両面から働く場にアプローチできるのがFMだと考えており、さらなる調査と研究を行い、効果的なFMを検討していく」とまとめた。
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