第13回日本ファシリティマネジメント大会「ファシリティマネジメント フォーラム2019」が2019年2月20日、開幕した。初日に行われたJFMA委員会によるこれからのFM戦略について提言を行った講演を紹介する。
日本ファシリティマネジメント協会(JFMA )主催の第13回日本ファシリティマネジメント大会「ファシリティマネジメント フォーラム2019」が2019年2月20日に開幕した。会場は東京・江戸川区のタワーホール船堀で、会期は同年2月22日まで。
今回は、「For the Future!『FMの未来、新たな価値を目指して』−時代が変わる。人・組織・社会を支えるファシリティマネジメント−」がメインテーマ。世の中の変化や技術革新とともに、FMの技術や役割を進化させながら、新たな価値を創造し、人・組織・社会に貢献し続けるために、ファシリティ(土地、建物、設備、什器、環境などの業務用不動産)のコストを抑えつつ価値を最大限に保ち、保有・運営・維持するための総合的な管理には何が必要かを考える場となった。
会場では、ゼネコンやデベロッパー、ITベンダー、大学、研究機関などによる多彩なセミナー、シンポジウム、製品・サービスの展示などが繰り広げられ、BIM(Building Information Modeling)、IoT技術、WELL認証、ワークプレース、働き方改革といったトレンドで、ファシリティマネジメント(FM)の新たな取り組みを多角的に紹介した。
初日には、主催者のJFMA会長・山田匡通氏のあいさつに続き、JFMA FM推進戦略委員長・板谷敏正氏による「JFAMの未来戦略−企業の持続的成長を支えるFM戦略の提言2019−」と題した講演が行われた。
板谷氏によれば、FMの役割は「導入することで、ハードとソフト、施設資産の効率化と、生産性向上の両面が改善されること」。
その実現のためにまず、経営トップも参画した全社的なFM推進を提唱。「あらゆる資産と人的資源を対象とした経営改善には、経営者が不可欠」とした。FMの活動は、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返す“PDCAサイクル”を回しながら、スパイラルアップさせるものだが、全社的意思の決定が伴う大胆な経営判断には、経営者によるROA(総資産利益率)や生産効率の目標設定、責任者任命も含むFM組織の構築などが要となる。
FMの提言では、企業不動産の有効活用によって、企業価値の最大化を目指す「CRE(Corporate Real Estate)戦略」を重視する。JFMAが推進しているFMは、米国の様にファシリティの運営・維持だけに重点を置かず、戦略・計画(考える)、プロジェクト管理(つくる)、運用・維持(つかう)、評価(知る)のサイクル(PDCA)全体をFMとして定義し、戦略・計画・プロジェクト管理のCRE領域も内包している。
次の提言では、「オフィス改革の実践」を説いた。協会のデータでは、FMに取り組んでいる企業は、共有スペースやフリーアドレスの導入によって、本社面積の2割削減に成功している。そうしたデータを網羅したオフィスのベンチマーキングともいえるデータ集「FM DATA BOOK JAPAN」を紹介。知的生産性の向上や効率的なワークプレース・施設管理に役立つ基礎データとしての利用を促した。
他に、健康に資する投資を行うことで、企業価値や生産性向上にもたらす「健康経営」を挙げた。ワークプレースを見直して従業員の満足度を上げたり、働き方を改善させたりすることで、経営状態の健全化を目指す。そのためには、事業を支える財務、IT、ヒューマンリソースの密な連携がカギになるとした。
また、FM実践のために、オフィスのベース性能となるユニバーサルデザイン(UD)など、ファシリティ・働きやすさ・組織のそれぞれを定量的に評価できるJFMAが提供している「各種ツールの活用」も提案した。
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