なぜ対象がガス圧接継手なのかについて、澤氏は「品質管理が重視される基礎・躯体工事の継手のなかで、年間にして約3000万カ所にも及び、全体の約7割を占めるガス圧接継手に着目した」と説明する。
ガス圧接継手は、鉄筋の接合部に圧力を加えながら、加熱し、接合端面を溶かすことなく赤熱状態で膨らみを作り、接合する方法。現場での検査では、専用の測定器を使って、1.膨らみの直径、2.長さ、3.折れ曲がり、4.偏心重、5.片膨らみ、6.圧縮面のズレの計6項目を人の目視によって確認している。この方法では、おおよそ1カ所につき、5分を要してしまうという。
AIは、このうち人の目でなければ判断できない圧接面のズレを除く、5項目に対応する。スマートフォンなどの撮影時には、撮影位置を示すガイドが表示され、正しく撮影すれば、Deeptectorが背景に左右されず、継手の輪郭のみを検出。判定ロジックに従って5項目の可否を判定する。判定結果も、OK/NGが画面に表示される他、5項目のうちどれに引っ掛かったか計算式も示されるため、不良となる原因を突き止めることもできる。
澤氏は、「1カ所あたりの検査が20〜30秒の短時間で完了するだけでなく、検査結果をデータで残せるため、点検の証明や品質の向上にもつなげられる」と話す。
鉄筋継手AI検査は、これまでに清水建設協力の下、数百枚の画像を教師データとして検証を進めてきた。今後は、2020年1月〜3月の期間で現場検証に移行し、光の届きにくい暗所や粗い画像での判定精度の向上などを行う。その後、2020年前半には検査員の研修用ツールとしての運用を見込む。
将来的には、「鉄筋工事のボルト締めや基礎工事のアンカーボルト間隔など、建設業の他の工事検査業務にもAI検査の適用範囲を拡大し、運輸業界(車両、線路)や自治体(道路、橋梁、トンネル)へも展開していく」とロードマップを示した。
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