キヤノンとキヤノンマーケティングジャパンは、一眼レフカメラを用いたAIによるひび割れ検知やドローン点検の開発に注力している。2018年7月18〜20日に東京ビッグサイトで開催された「メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2018」内の「第10回インフラ検査・維持管理展」で、インフラ構造物の点検ソリューションを提案した。
キヤノンとキヤノンマーケティングジャパンは、開発中の自社の一眼レフなど高精度カメラを用いたAIのひび割れ検知やドローン点検を「第10回インフラ検査・維持管理展」で参考出展した。
ひび割れ点検は、東設土木コンサルタントとの共同研究で、AIを活用し、画像から構造物のひび割れを自動検知する技術を参考出品した。
キヤノンが行うひび割れ点検サービスとしては、きれいに撮影する、画像を処理する、ひびを検知するの3つの工程がある。撮影画像に対し、ひび割れをAIで自動検知して、東設土木コンサルタントが開発した変状展開図作成ソフト「CrackDraw21」で修正する。最終的に点検レポートとしてユーザーに納品するまでが、一連のサービスとなる。
現状で行っているように、人手でも「CrackDraw21」を使えば、ひび割れなどの変状を検知することは可能だが、ひび割れをトレースする部分をAIに置き換えることで、工数が大幅に削減できるメリットがある。
また、写真画質が向上したことで、検知できる変状数は増加したため、人手では高コストとなってしまうため、コスト面でも期待ができる。一例として、500本のひび割れ画像を人手で検知すると720分かかるが、AIの自動検知だと人による補正の8分の1となる90分ほどでデータ化ができたという。
撮影に関しては、高さ10m(メートル)の場所を対象にしても、キヤノンの一眼レフカメラ「EOS 5Ds」を使えば、地上からでも5000万画素の高精細画像を取得することができる。人が立ち入れない鉄道の跨線橋では、小型多目的モジュールカメラ「MM100-WS」と、撮影用ポール、遠隔操作のタブレットを使えば撮影でき、キヤノンでは豊富なカメラとレンズ群であらゆる場所の点検に応じると、他社の点検サービスとの違いを強調する。
小型カメラのMM100-WSは、サイズが40×40×21.6mm、重さは48g(グラム)。IP54に準拠した防滴および防塵(ぼうじん)構造で、耐ショック性能も備える。小型ながら本体には、Wi-Fi機能を内蔵し、遠隔操作にも対応。ISOは最大1万2800(静止画:ISO6400)で、最低被写体照度1ルクスを実現しているため、トンネルや暗所での点検にも十分使用が可能だ。
ひび割れ検知では、1枚の写真を0.3mm=1ピクセルとするため、0.2mm以下のヘアクラックまでを認識。
画像処理の大まかなフローは、0.3mmを1ピクセルとして撮影した写真をオルソ化(ゆがみ補正)して1枚に合成。人の手でCrackDraw21、または開発中のAIで、変状を検知しトレースすることで、CAD図面と連動することができるようになり、数年間にわたった時間的なひびの変化などの比較にも役立つという。
担当者は、「鉄道の高架橋でトライアルを行ったが、ピボットや竣工時からあるネジ、点検時のチョークの線は除外して、ひび割れのみを検知することができた。90%は完成した形だが、ビジネスとしてこの領域をスタートさせるかは今後、検討していく」と話す。
ブースでは、キヤノンが開発に取り組む、一眼レフを搭載した点検ドローンも紹介された。
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