吊るした円盤は、1分間に6000回転するモーターを4分間に1回ゴムをねじることで、空気抵抗やゴムによって人工的では無い自然な動きが生み出される。透明なPETフィルムのため、照明が当たると8の字に表面を光が走り、sawako氏の指摘する音を視覚化するサーモグラフィーのような表現が生み出される。円盤が横から順に揺れていくことで、室内を風が吹いているのでは?と感じた来場者は多いという。
建築家とコラボするのは初めてと口にするsawako氏は、横河氏と共通するものは「エレガンス」「繊細さ」「境界の曖昧さ」「増幅効果」とし、これらの要素に音でアプローチした。環境音楽で都市の騒音や喧噪(けんそう)を入り口付近に流し、幸せな「歓びの空間」に至る一回性の旅を音によって誘導した。一部では足音などが聞こえるように無音の空間も設け、本来はオカムラのオフィス空間であることも考慮。作品世界とオフィスが折り重なるような“境界の曖昧さ”を狙った。
sawakao氏は「歓びの空間や旅を音響で押し付けるのではなく、それぞれのシーンに合うように演出した。都会の音というと簡単そうに思えるが、新宿や渋谷など、音から特定の街の印象が想起されてしまう。森や水の音にしても、イメージが付かない様に気を遣った」と話す。
今回の共同作業の中で、「メディアアートは通常、即興で作って崩すことの繰り返しで、数十年耐えるものを作るため細かく検証する建築との制作手法の違いを実感した。音は毎日調整が必要で、展覧会の始まりの日が音づくりのスタート日。オープン日には、サプライズで歌も披露した」(sawakao氏)。なお、会期中の2019年7月31日と8月17日の2回、公開録音パフォーマンスも予定されている。
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