スマートビル社会実装までにサービスロボ、データモデル、専門人材「MSI」が果たす役割SMART BUILDING CONFERENCE 2025(1/3 ページ)

情報処理推進機構とデジタルアーキテクチャ・デザインセンターは2025年3月27日、東京・千代田区でスマートビルの一般社会での普及を目指す「スマートビルディング共創機構」の設立を発表する「SMART BUILDING CONFERENCE 2025」を開催。本稿では、その中からDADC内の「サビロボ(サービスロボット)」「データモデル」「MSI(マスターシステムインテグレーター)」の各アプローチでスマートビル社会実装に向けた活動成果と今後の課題などを発表した。

» 2025年05月28日 17時22分 公開
[川本鉄馬BUILT]

 SMART BUILDING CONFERENCE 2025では、主催者の情報処理推進機構(IPA)とデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)に加え、スマートビルの普及に関わる有識者が講演を行った。本稿では、その中からDADC内の「サビロボ(サービスロボット)」「データモデル」「MSI(マスターシステムインテグレーター)」の各分科会がスマートビル社会実装に向けた活動成果と今後の課題などを発表した。

【サビロボ分科会】ロボット共生社会の実現へ向けて

TIS ソーシャルイノベーション事業部 青木紀勝氏 TIS ソーシャルイノベーション事業部 青木紀勝氏 写真は全て筆者撮影

 サビロボ分科会では、元DADC研究員でTIS ソーシャルイノベーション事業部 青木紀勝氏が分科会で検討中の将来ビジョン、サビロボ・アーキテクチャ、建物内ロボットサービスを実現する具体的な仕組みと役割を解説した。

 検討の背景には、日本が直面する急速な人口減少と労働力不足という課題がある。青木氏は、ロボット導入で“人口ボーナス”に近い効果をもたらし、社会全体のQoL(生活の質)向上を目指す将来ビジョンを提示。“人口ボーナス”とは、生産人口が非生産人口を上回る状態を指す。

サービスロボットが活躍する社会のビジョン。ロボット投入による人口ボーナスで、国民全体のQoLを上げる サービスロボットが活躍する社会のビジョン。ロボット投入による人口ボーナスで、国民全体のQoLを上げる

 ビジョンに基づき、分科会では3つの観点から検討を進めた。サービスロボットが果たすべき役割や導入の方向性、実現するためのアーキテクチャ(設計思想)の構築、そのアーキテクチャの運用を誰がどのように担うのかの論議だ。

 ロボット導入には、まず清掃や配膳など既に一定の導入実績がある領域からスタート。段階的に標準化や拡大を図るべきとした。

 ロボットのコスト低減では、インフラ側との連携に着目したことを示した。建物側が一部機能を担えば、ロボット本体はより簡素化かつ低価格の性能でも構わない。同時に、複数ロボットが同一空間で協調して運用できる仕組みをベンダー各社が構築することも重要なテーマとなる。

 実現には、交通管制や地図共有、タスク管理、環境状況の把握といった機能の標準化が不可欠となる。分科会では、シンガポールなどの事例も参考にしながら、“建物OS”との連携も含めた統合的なロボット運用環境の実現可能性も議論している。

ロボット社会の発展シナリオ ロボット社会の発展シナリオ

 運用では、建物管理者、ロボットサービス事業者、ロボットベンダーが主体となる3パターンを提示。建物側がロボットに直接指示すると、各事業者のサービスを邪魔してしまいかねない。そのため、建物側が情報提供などで間接的に支援し、事業者がサービスを運用する役割分担が現実的と結論付けている。

建物側では、ロボットの位置情報やエリア予約情報などの、建物側でしか把握できない情報を扱う 建物側では、ロボットの位置情報やエリア予約情報などの、建物側でしか把握できない情報を扱う

 今回創設したスマートビル共創機構に対しても、緊急時情報、エリアの属性情報、建物内でロボットが関与するアセットIDの統一、地図の統一など8種類の情報共有を求めた。

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