ロボット本体のサイズは、533(幅)×440(高さ)×610(長さ)ミリで、重さは約30キロとコンパクト。操作は手動リモートコントローラーをパソコンにつないでコントロールする仕組み。ロボットの設置や操作方法が簡単なため、比較的規模の小さい建物や隣地境界との空きが少ない建物の検査に適する。
検査対象のうち、ひび割れについては搭載されているカメラ(約210万画素、光学3.5倍ズーム)で撮影し目視にて確認。タイルの浮きや剥離(はくり)は、打診システムで打音結果をデータ化して診断する。ロボットによる測定スピードは1平方メートルにつき、おおよそ5分で完了するという。
把握した劣化位置はデータ化され、PC上では自己位置推定ユニットなどの位置評定システムで、外壁面の劣化状況を図示化。計測データは経年変化の累積情報として、改修履歴とともに保存され、建物の維持管理などライフサイクルマネジメントに活用できる。
近年、老朽化したビルが増えていることに伴い、外装タイルの剥落(はくらく)事故の増加が全国的に懸念されている。2008年に改正された建築基準法では、ビルなどの特殊建築物の所有者・管理者に外壁検査を義務付けた。
一般的な検査方法は、技術者が壁面全面を打診し、その音の異常の有無を聞いて診断するが、足場の架設やゴンドラやロープで上から作業者を吊(つ)る必要があるため、ビルオーナーにとってコストや工期などの負担が大く、点検精度も経験や技量に左右されるので、検査方法の効率化と診断精度の向上が求められていた。
その点、壁面走行ロボットによる外壁点検システムであれば、点検者の安全性は確保されることに加え、点検データも蓄積されることで、建物の寿命全体を考えた維持修繕計画の策定に役立てられ、長寿命化と長期的なコスト低減がもたらされる。
高松建設の技術担当者は、「今回のロボットは診断の速さではなく、“仮設がいらない”という点で時間・コスト的メリットが生まれる。中規模マンションだと仮設設置に1週間程度かかり、さらに解体が必要となるが、壁面走行ロボットは仮設が不要のため、その分の工期と費用が抑えられる」と導入メリットを説明する。
壁面走行ロボットによる外壁点検システムの運用は3社共同で、2019年8月より実際の建物で運用を開始し、当面はグループ内での利用していくとしている。
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