万博「日本政府館」の建材を全国各地で再利用 積水ハウスと東大の「旅するCLT」大阪・関西万博

積水ハウスと東京大学は、「旅するCLT」と称して、大阪・関西万博の日本政府館で使用したCLT(直交集成板)を再利用する。万博の記憶が刻まれたCLTパネルを用い、2027年以降に建築物を施工し、その後も一度きりではなく旅をするように全国各地で解体と再構築を繰り返す。

» 2026年01月27日 10時00分 公開
[BUILT]

積水ハウスは2025年12月、東京大学と産学協働で、大阪・関西万博の日本政府館で使用したCLT(直交集成板)を再利用するプロジェクト「旅するCLT」を発表した。万博終了後に解体する建材を複数回再利用することで、建築分野のサーキュラーエコノミーへの移行可能性を検証する。

サーキュラーエコノミーへの移行を見据え、建材の再利用を検証

大阪・関西万博 日本政府館 大阪・関西万博 日本政府館 出典:積水ハウスプレスリリース

 CLTは、Cross Laminated Timberの略。ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料で、国内の森林資源の活用促進や地域経済の活性化など、林業政策の観点からも注目されている。

 旅するCLTは、日本政府館で使用したCLTパネルを建材として再利用し、建築物の施工、解体、再構築を繰り返しながら全国各地を巡回させる構想だ。一度だけの再利用にとどまらず、複数回の解体と再利用を前提としている。検証や試行を重ねた後、2027年以降にCLTパネルを用いた建築物や制作物を日本各地で展開する。

プロジェクトフロー プロジェクトフロー 出典:積水ハウスプレスリリース

 積水ハウスは、日本政府館の「CLT再利用パートナー」に選定された。今回の取り組みは、積水ハウスの寄付で、東京大学総括プロジェクト機構内に設立した国際建築教育拠点「SEKISUI HOUSE − KUMA LAB」を中心に進める。

 検証テーマは、設計、材料、システム、感性価値の4つの観点から設定した。設計面では、既存材料の履歴や個性を踏まえて設計検証し、デジタルデータをもとに3Dプリンタやレーザーカッターなどで製作する“デジタルファブリケーション”を用いた設計手法を検討する。材料面では、解体材の残存性能評価や構造耐力算定の指標確立に取り組み、廃材として扱われがちな解体材の建築利用可能性を検証する。

 システム面では、設計、生産、物流を含む一連のプロセスを再構築し、再利用を前提とした建築生産の仕組みづくりを目指す。さらに、時間を経た素材が持つ触感や記憶といった感性価値にも着目し、資源循環を文化として定着させることを視野に入れる。

 スケジュールは2027年まで続く長期計画で、準備段階から複数のフェーズに分けて進行する。Phase 0(2024年)では、東京大学や外部講師による講義、学生参加型の打ち合わせを通じて、再利用材の仕分け方法や制作物の方向性を検討した。Phase 1(万博開催期間)では、CLTを用いたモックアップ制作やフィールドワークを重ね、学生らと共に企画検討を行った。Phase 1の終わりには、建築家の隈研吾氏を交えた再利用企画について意見を交換した。今後は、CLT引き取りを含む、施工と解体での検証を本格化させる。

スケジュール スケジュール 出典:積水ハウスプレスリリース
隈研吾氏を交えた再利用計画の意見交換 隈研吾氏を交えた再利用計画の意見交換 出典:積水ハウスプレスリリース

 積水ハウスでは今回のプロジェクトを2024年12月に発表した「循環する家(House to House)」の実現に向けた取り組みと位置付けている。そのため、建築物などの施工や制作には、独自構法による住宅解体材の再利用も予定している。

 さらに、再利用の各プロセスでの検証や試行を通じ、住宅の分解や再構築を容易にする部材やシステム、再利用を前提とした住宅解体を可能にする技術、設計手法、デジタル情報の活用など、さまざまな知見の蓄積や方法論の構築を図る。

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