大林組は2025年11月26日、山岳トンネル工事の安全性と生産性を向上させる統合システム「OTISM/TUNNELING」を、R4国道20号新笹子トンネルその1工事に実装したと発表した。
大林組は2025年11月26日、山岳トンネルの施工を自動化/遠隔化する統合システム「OTISM/TUNNELING(オーティズム/トンネリング)」の構成技術を集約し、山梨県大月市と甲州市にまたがる「R4国道20号新笹子トンネル」その1工事の建設現場に実装したと発表した。
危険を伴う山岳トンネルの掘削面(切羽)直下に人が立ち入らず、熟練の技能労働者に依存しない施工を実施。掘削作業の一連の工程において、安全性の確保と生産性向上を確認した。
大林組は、山岳トンネルの施工における安全と品質、生産性を高める統合システム「OTISM(Obayashi Tunnel Integrated System)」を構築し、これまで各技術を個別に実証してきた。
OTISMを構成するOTISM/TUNNELINGは、トンネル掘削作業の安全性向上、省人化を実現するシステムとして「穿孔(せんこう)/装薬」「ずり出し」「吹付けコンクリート」「支保工建込み」「ロックボルト打設」の5つの作業分野で構成される。今回、この技術をR4国道20号新笹子トンネル工事の現場に集約し、掘削作業の1サイクルを施工した。
施工サイクルは、発破のための穿孔作業と発破パターン作成の自動化、コンクリート吹付け作業の遠隔化、鋼製支保工建て込み作業の遠隔化、ロックボルト作業の遠隔化の4工程で実施。
穿孔は油圧削岩機のフルオートコンピュータジャンボを使い、設定済みの発破パターンに従い自動的に行う。オペレーターは1人で2つのブームを監視し、進行状況や機械の動作を確認しながら、必要に応じて調整する。
発破パターンの作成は、ブラストスキルAIを活用し、コンピュータジャンボの穿孔データと切羽の写真を分析。熟練技能者の経験や暗黙知に頼らず、次サイクルの最適な発破パターンを作成する。
コンクリート吹付け作業は、出来形の測定スキャナーと作業状況の監視カメラを搭載した出来形/監視UGVを使用し、リアルタイム出来形計測システムを通じて遠隔地からモニターを確認しながら実施する。
支保工の建て込みには、遠隔建て込み技術「クイックテレクター」を採用。モーションキャプチャ技術を活用したガイダンスシステムに従い、オペレーターが1人で所定の位置に支保工を誘導/設置する。ロックボルト打設には遠隔打設機「ロボルタス」により、削孔からモルタル注入、ロックボルト挿入までの一連の作業を遠隔操作で実施した。
今回の現場では掘削作業中に切羽直下へ立ち入る必要がなくなったため、肌落ちが生じても人的被害が発生せず、安全性が大幅に向上した。また一連の施工サイクルでは、従来の方法と比べて20%省人化できることを確認した。
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