名古屋工業大学大学院 教授 北川氏は、自身が経験した経験をもとに、海外での先進的な避難事例を紹介。トルコでは発災から72時間以内に避難所へ大道芸人を派遣することを条例で定めていたり、イタリアではイタリア料理のシェフやワインのソムリエが当たり前のように災害地で料理を振舞っていたりと、日本との明確な違いを強調した。
北川氏は「何よりも重視すべきは、心地良さや快適さ。避難所だからと言って、わざわざ暗い態度でいる必要はなく、少しでも楽しく健やかに過ごせる環境構築が日本にも求められる」と力を込めた。それを実現する具体的な施策の1つとして、自身が開発し、プログラムにも盛り込まれている「ダンボール製のインスタントハウス」に言及。自分たちで考え、デザインし、楽しみながらインスタントハウスを組み立てることで、被災した人たちの「第2の家」となり、希望につながるケースもあるという。事実、屋内用インスタントハウスは、2024年の能登半島地震の復旧でも導入され、多くの被災者が活用した。
11時からは、36人の参加者が3グループに分かれ、「ダンボール製のインスタントハウス組み立て」「仮設トイレの組み立て/解体」「避難所の運営におけるウォークスルー」をそれぞれ順番に体験した。
まず、インスタントハウスの設置体験では、ダンボールキットを開発した北川氏が中心となって進行した。完成品を展示し、見比べながら各ダンボールの折り方、組み合わせ方、装飾方法などを丁寧にレクチャー。
インスタントハウスは、暑さ寒さをしのげるのはもちろん、約15分と短時間で設置/撤去を可能とし、衛生的でプライバシーを守れるつくりになっている。軽量で子どもにも簡単に組み立てられる他、途中で発生した端材は、オセロや将棋の駒として転用するなど、遊具代わりにもなるよう工夫が凝らされている。体験者からは「個室空間を提供してもらえるのはうれしい」「その場にあるもので装飾するのは意外と楽しく、『自分のもの』だという実感が湧く」と、避難所でのストレス発散につながる効果を期待する声も挙がった。
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