もう一方の実証では、ソリトンシステムズが開発した遠隔映像伝送/制御ソリューション「Zao(ザオー)」シリーズを用い、油圧ショベルのカメラと通信装置で、現場と会場をリアルタイムで結んだ。ZaoシリーズはK-DIVEとは異なり、オペレーターはコンパクトなコントローラーで操縦する。
建機側の機器についてソリトンシステムズの担当者は、「当社は建機メーカーではないので、最初から遠隔機能を建機に組み込むビルトインではなく、強みの通信技術を生かせる既存建機に後付けする仕様とした。そのため、メーカーを問わず、現場で稼働している建機をレトロフィットでそのまま遠隔化できる」と優位性を強調した。
その言葉通りZaoシリーズ最大の特徴は、低遅延で高信頼の映像伝送にある。現場のカメラ映像をLTEや5Gなど複数の通信回線に分散して送信する「マルチネットワーク接続」により、仮に一部の回線が切断されても映像の途切れを最小限に抑えられる。
専用機構を要せず、映像と制御の伝送レイヤーに焦点を当てたソリトンシステムズのアプローチは、既存資産を生かす中小建設業でもコストを掛けない現実的なソリューションといえる。
既に警察や消防、報道などで実績があり、災害時や通信インフラが不安定な地域でも安定稼働が見込める点が復興支援でも高く評価されている。
ソリトンシステムズは建機の動作信号だけでなく、操作者のインタフェースや安全監視データも同一ネットワークで統合的に扱う試みを進めており、「遠隔施工の通信OS」を担う構想を描いている。
今回のデモンストレーションは、単なる技術実証にとどまらない。日本の遠隔施工技術をウクライナの復興支援という国際協力の文脈に位置付けることで、建設分野の新たな「官民連携モデル」の可能性を示した。
国交省は、遠隔施工を「安全、効率、包摂」というキーワードで整理している。危険を避ける安全性、複数現場を統合管理できる効率性、そして戦傷者や育児中の女性など現場に出られない人材を生かす包摂性――。3要素の両立で、戦争や自然災害の被災地でも持続的なインフラ整備を実現することを目指す。
国交省の小島氏は閉会あいさつで、「遠隔施工は、人と技術をつなぐ仕組みで、国境を越えて“安全に働ける場”を創出する可能性を秘めています。日本が培ってきた防災や復旧の知見をウクライナの復興と共に未来につなげたい」と抱負を語った。
ウクライナ復興には今後10年規模の長期支援が見込まれており、遠隔施工技術はその中核を担うことが期待される。
被災現場から遠く離れたオペレーションセンターで熟練者が施工を支援し、若手や女性が安全に作業を学び、世界中のどこからでも復興に参加できる。それは、戦争や災害によって分断された人と地域を再び結び直す“インフラの再定義”といえるだろう。安全で持続可能な復興の形を、日本の建設技術がどこまで支えられるのか。その挑戦は、これから始まる。
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