実証では、キーウのオペレーターがモニター越しに操作し、8000キロ離れた神戸の油圧ショベルを滑らかに作動させた。遠隔操作の技術としては異なる2種類のシステムを試した。1つはコベルコ建機が独自開発した「K-DIVE(ケーダイブ)」だ。安全な屋内に設置する操作用の没入型コックピットと、現地のコクピット内に搭載した操縦ロボットをネット接続。操縦者側のコックピットは、3面モニターと操作レバー、ペダルで構成し、実機の動きや振動、油圧の反応をリアルタイムで再現し、まるで運転席に座っているかのような感覚で操作できる。
遠隔施工の利点は、熟練オペレーターが現地に行かずとも、保有する経験を複数の現場に生かせることにある。通常は現場ごとに専属オペレーターが必要だが、K-DIVEでは1つのコックピットから異なる場所で稼働する建機を切り替えられる。
そのため、限られた人数でも効率的に現場が回り、被災地や過疎地などオペレーターの確保が難しい現場で極めて有効となる。
K-DIVEには教育訓練モードも備わっており、実機を動かさずに仮想空間上で疑似的に操作できるため、若手や初心者のスキル習得に役立つ。災害現場や復興工事など危険度の高い作業を想定した訓練が、安全な環境で行えるのも利点だ。
コベルコ建機 代表取締役社長 山本明氏は、「建設現場は人々の安全を守る場所でなければならない。K-DIVEは、危険な場所に行かずに作業できる仕組みを提供することで、建設業に新しい働き方をもたらす」と語った。
キーウの会場では、建機操縦の研修を受けたばかりの女性がオぺレーターを務めた。このことは「建設業=現場作業」という固定観念を覆し、“安全な場所から社会インフラを支える仕事”という新しい価値の提示にもつながる。コベルコ建機が目標とするのは、建設現場の安全と効率、そして働く人の多様性を両立させる未来だという。
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