AI×デジタルツインで進化するインフラ点検 枕木劣化を列車カメラで判定など【土木×AI第36回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(36)(2/3 ページ)

» 2025年10月09日 10時00分 公開

 下図左は、木まくらぎの劣化度の判定例です。列車前方画像は斜めから撮影した画像になりますので、下図右のようにまくらぎが実寸法と同じ縦横比率になるように変換して、従来の目視検査に近い状態の俯瞰画像を求めています。また、設置位置が分かっている軌道検測車用のデータデポを利用して、画像からデータデポを検出することで、まくらぎの位置を高い精度で求めています。

木まくらぎの劣化度(左)と俯瞰画像(右)の例 木まくらぎの劣化度(左)と俯瞰画像(右)の例 ※3

全天球画像をSfMで3Dモデル化

 360度カメラは広い範囲を撮影することが可能なことから、点検や各種現場用途に用いられることも増えています※4全天球画像に対しても、連載23回で取り上げたSfMが適用可能です※5。球面座標系を考慮したSfMで、下図のようにカメラ姿勢を逆算し、撮影画像を組み合わせて3次元モデルを得ることができます※6

全天球画像のカメラ姿勢計算結果と3次元モデルの例 全天球画像のカメラ姿勢計算結果と3次元モデルの例 ※6

※4 滋賀県建設技術センター「360°カメラ事例集」

※5 BUILT「点群とAIを土木の設計や維持管理に応用する最新の技術動向【土木×AI第23回】」

インフラ構造物の損傷検出に活用

 下図のように得られた3次元モデルと、AIで検出した損傷を重ね合わせて表示する検討も進められています※6

全天球画像のカメラ姿勢計算結果と3次元モデルの例 3次元モデルと点検結果の重ね合わせのイメージ ※6

※6 「360度カメラ画像を活用したインフラ構造物の点検情報管理システムの構築」山根達郎,陳瑜,久保栞,浅野和香奈,片山直道,岩城一郎,全邦釘/AI・データサイエンス論文集6巻1号p340-348/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2025年

 画像による損傷検知と、LiDARによる点群計測を組み合わせ、損傷の正確な位置や寸法を計測する研究も進められています※7。LiDARによる点群は、画像に比べ空間的な解像度が低いので、点群のみでは特に小さい損傷は検出することは困難です。そこで画像とLiDARによる点群で、損傷の検出と位置/寸法の計測の両方が高い精度となるように試みています。下図は、導水路トンネルの錆の領域に対応する点群を自動的に抽出した例です。

錆の領域(左)と対応した点群を抽出(右)した例 錆の領域(左)と対応した点群を抽出(右)した例 ※7

※7 「センサーフュージョンを利用した3次元点群からの錆の検出」板倉健太,林拓哉,斎藤嘉人,全邦釘/AI・データサイエンス論文集6巻2号p62-72/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2025年

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