“はかる”技術でドローン測量を進化させてきたアミューズワンセルフの歩み第7回 国際 建設・測量展(3/3 ページ)

» 2025年10月06日 13時37分 公開
[加藤泰朗BUILT]
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次世代モデル「TDOT 7」シリーズは、全方位で進化

 講演は後半に入り、冨井氏は最新の「TDOT 7」シリーズと、それを支える新型ドローン「GLOW」シリーズを紹介した。

 TDOT 7 NIRは、多機能を搭載しつつ軽量化と価格抑制を実現した近赤外線タイプのエントリーモデル。最大30万Hzのパルスレート、毎秒100ラインのスキャンスピード、エコー数は5を備える。LTEモジュールとNVIDIAのエッジAIコンピュータ「Jetson Xavier NX」を内蔵することで、測量データをリアルタイムで遠隔地へ送信できる。転送にはKDDIの圧縮ソフトウェアを活用し、点群を最大20分の1に圧縮して伝送可能だ。

 エントリーモデルに対し、フラグシップとなるのが「TDOT 7 NIR-S」だ。最大240万Hzのパルスレート、毎秒400ラインのスキャンスピード、エコー数32という高性能を誇り、大規模かつ高精度を求められる計測に対応する。

 冨井氏が「真の意味でのフラグシップ」と語るのが、次世代グリーンレーザー「TDOT 7 GREEN」だ。パルスレートは16万Hz、スキャンスピードは毎秒80ラインへと進化し、視野角も120度まで拡張した。他社製品が水深計測を主眼に視野角40度前後にとどまるのに対し、陸上と水中双方での活用を可能にする思想が反映されている。標準で可視カメラを搭載し、オプションでサーモカメラを追加できる点も大きな利点だ。重量は3.6キロとやや重く、DJI「Matrice 350 RTK」には非対応となるが、「GLOW」シリーズや4キロ級のペイロードを持つドローンで運用可能だ。

冨井氏が「真の意味でのフラグシップ」と語る「TDOT 7 GREEN」 冨井氏が「真の意味でのフラグシップ」と語る「TDOT 7 GREEN」

 その軽量版として初公開されたのが「TDOT 7 GREEN LITE」だ。フラグシップと同等の計測性能を維持しながら2.7キロまで軽量化し、DJI「Matrice 350 RTK/Matrice 400」にも対応。「LTE非搭載やサーモカメラ非対応といった制約はあるが、通常の測量で必要な機能は全てそろえており、一般的な利用には十分耐えうる」とPRした。

アミューズワンセルフのブースに展示された「TDOT」シリーズ。右端には「TDOT 3 GREEN」も見える アミューズワンセルフのブースに展示された「TDOT」シリーズ。右端には「TDOT 3 GREEN」も見える

折り畳んで運べ、4時間飛ぶ、刷新を遂げた「GLOW」

 こうした各種レーザーシステムを支えるプラットフォームとして、ドローン機体も刷新した。

 「GLOW. L Rev.2.0」は第2世代機で、大型インテリジェントバッテリーを主電源とし、小型サブバッテリー2本を組み合わせ、冗長性を確保している。

ローターを折り畳んだGLOW. L Rev.2.0。下部のジンバルにはTDOT 7 GREEN LITEを搭載 ローターを折り畳んだGLOW. L Rev.2.0。下部のジンバルにはTDOT 7 GREEN LITEを搭載

 一方の「GLOW. H Rev.2.0」は小型発電機のレンジエクステンダーを搭載したハイブリッド機で、従来の飛行時間が30分程度だったのに対し、約4時間の連続飛行を実現。ガソリンを現地調達すればよく、バッテリー充電は不要となる。冨井氏は「従来のバッテリードローンは飛行時間が短く、費用対効果が課題だった。しかしハイブリッド機なら2〜4時間の連続飛行が可能で、コスト構造そのものが変わる」と強調し、河川などの定期的な巡視、津波発生時の沖合調査、被災時の携帯電話中継局、軽荷物の運搬など、今後の実用化に期待を寄せた。

TDOT 7 GREENを搭載したGLOW. H Rev.2.0 TDOT 7 GREENを搭載したGLOW. H Rev.2.0

 両機とも折り畳み式で、機体を60センチ四方に収納できる。跳ね上げ式ランディングギアにより、ジンバルに取り付けたカメラやレーザーの死角を減らす工夫も施されている。また、レベル3.5の目視外飛行に対応するため、FPVカメラや衝突回避センサーも標準装備。動力系以外の部品を共通化することで、導入コストを抑えながら高い実用性を備えた機体に仕上げている。

現場で証明された“使える測量”

 講演を通じて冨井氏が強調したのは、ドローンとレーザーシステムの開発を積み重ねてきたアミューズワンセルフの歩みが、実証を通じて「現場で使える測量」へと結実しているという点だ。

 その象徴がTDOTシリーズだ。NETIS登録技術として評価され、2018年に国が決定した防災/減災関連の緊急対策に基づき、全国の地方整備局に導入。グリーンレーザーシステムは11台、全天候型ドローンは30台が配備され、未来投資会議や国交省の技術検討会でも紹介されてきた。

 “はかる”技術で社会課題の解決に向き合ってきたアミューズワンセルフ。その取り組みは、技術が現場に根づき実効性を発揮していることの証左に他ならない。冨井氏の講演は、ドローン測量の可能性と即応性が切り拓く未来を力強く示した。

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