ダイダンのZEB認証を取得したZEB Ready1棟含む自社オフィス3棟(図5)で、省エネ建築物の“新築”による効果を総合的に定量評価すべく、NEBsを用いて評価しました。3棟は、省エネルギーと快適性向上の両立に取り組んだ建物です。
本取り組みで適用したNEBsの定量化手法は、3ステップで構成されています。STEP1では公開情報(延べ床面積、主な設備などの竣工データベースなど)をもとに算定、STEP2では内部情報(設備の運用時間/エネルギー削減量/メンテナンス頻度などの施設設備に関する情報、職種別の在館者数と在館割合や残業時間/欠勤時間といった従業員に関する情報など)と社員への環境満足度アンケートで算定しました。さらに、STEP3では現地視察し、施設設備の利用状況の確認や従業員へヒアリングを実施し、使用者の生の声を捉え、納得感を確認して精緻化を図りました。
評価の結果、1200平方メートル程度のオフィスビルで、エネルギー消費量(光熱費)の削減効果は建物全体で2700万円/年、光熱費以外のZEB導入による生産性向上などの効果は建物全体で1億300万円/年と推計されました。エネルギー消費量のみの投資回収年数に比べ、NEBsを含めた投資回収年数は約1/4まで短縮され、ZEB導入の潜在的な効果を適切に算定することで、ZEBに取り組むメリットを定量的に可視化しました(図6、7)。
八洲建設の実践例では、愛知県半田市にある本社社屋を対象に、省エネ“改修”による効果を総合的に定量評価すべく、NEBsを用いました(図8)。本社社屋は、東海地域の事務所で初の既存建築物ZEBを取得した事例となっています。
検証の結果、1100平方メートル程度のオフィスビルで、エネルギー消費量の削減効果は建物全体で1300万円/年、光熱費以外のZEB導入による生産性向上などの効果は建物全体で1億1900万円/年と推計されました。ZEB 導入による生産性等の効果は光熱費削減効果の約9倍、エネルギー消費量のみの投資回収年数に比べ、NEBsを含めた投資回収年数は約10分の1まで短縮されました(図9、10)。
検証のための従業員へのアンケートやヒアリングでは、「夏や冬の空調の立ち上がりが良くなったり、窓際の座席の温熱環境が改善したり、ZEB化改修を経て快適に働けるようになりました」などの快適性に関する好評価が多く挙がりました。
本稿では、ZEB認証取得ビルの副次的な効果の発現状況を確認すべく、国内での民間企業の事務所やビル、自治体の庁舎などを分析した結果、実物件での算定事例、NEBsを活用した評価の具体的なイメージを紹介しました。
次回の第3回では、「ワークプレース/テナントビルのNEBs評価と算定事例」の解説を予定しています。テナントビルでは、ビルオーナーが投資を行いますが、ベネフィットを主に享受するのはテナント企業のため、なかなかZEB化が進まないという課題があります。そのような課題を抱えるテナントビルでのZEB化を推進すべく、NEBsによるベネフィットの定量化事例を紹介します。
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