大阪公立大学が大阪府堺市中区の「中百舌鳥キャンパス」で建設を進めていたスマートビルの実験棟が2025年4月に供用を開始した。学生や研究者、民間企業などが、産学で次世代スマートビルの社会実装を目指す実験場となる。そのコア技術となるのが、建物内の温度、湿度、CO2濃度などの多様なデータと連動して、建物設備を省エネ制御するビルのOperating Systemとなる「ビルOS」だ。
大阪公立大学が建設を進めていたスマートビルの実験棟「イノベーションアカデミー スマートエネルギー棟」が2025年4月1日に供用を開始した。
スマートエネルギー棟は、建物の年間エネルギー消費ゼロを目標とする「ZEB(ネットゼロエネルギービル)」化のための技術高度化とスマートビルの社会実装に向け、実験やオープンイノベーションを促進する場として活用する。企業と連携した研究やスタートアップ創出を見据えた産官学のリビングラボ施設としての顔も持ち、多様化するビルのニーズに応える技術開発を加速させる。
スマートビルの技術開発では、課題解決をアプリケーションで実現する「アプリネイティブ思考」をモットーに掲げ、ビルOSと連携し、エネルギーの効率的な運用などを自動化するソフトウェアやアプリの開発に積極的に取り組む。
供用開始に先だって2025年3月28日に開かれた内覧会で、大阪公立大学大学院 情報学研究科 教授 阿多信吾氏は、「アプリやソフトウェアをアップグレードすることで、エアコンを始めとする多様な機器をより効率的に使えるようになるはず。新棟でさまざまな実験に着手し、これからのビルOSで何ができるかを示していきたい」と力を込める。
施設では建物全体を開発環境として想定し、スマートビルの核となるプラットフォームのビルOSを通じて、さまざまな環境データの取得や施設制御ができるようにしている。データ取得では空調や照明の稼働状況に加え、温度や湿度、CO2濃度などが分かる環境センサー、混雑度などを測るカメラなどを設けている。制御面ではエレベーターのロボット専用運転、自動ドア開閉などを実験できる。新たな設備や装置の追加も容易で、学生や研究者、企業関係者などと連携したテスト環境を整えた。
ビルOSの社会実装までの合言葉を「ビルOSの価値を決めるのは利用者数」とし、実験棟で得られた研究成果を踏まえ、2025年9月末に大阪府大阪市城東区でオープンする「森之宮キャンパス」でも大規模実験を計画しており、現場に近い環境でデータ収集を試みる。
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