2023年に開始を目指すと述べてから一定の時間を要したが、このたび日本国内でのBIM推進の非営利団体「BIM Innovation HUB」が始動し、Webサイトを公開した。本活動のメインコンセプトは、日本の建設業界の危機構造から脱却するために、「BIMからIM(情報マネジメント)への進化を促す」ことにある。
現在、日本におけるBIMの多くは、3Dモデルの作成や活用にとどまり、個別の技術導入は進んでいるものの、プロジェクト全体のプロセス改革による生産性向上などには結びついていない。これでは、設計変更の削減といった建設業界の根本的な課題に対応することは困難だ。
一方で、海外の建設業界で進展しているのは、「情報マネジメントの潮流」だ。世界でBIMは、設計・施工・運用に関わる情報を、意思決定のために“統合的に扱うプロセス”と位置付けている。そして、その考え方は現在では、BIMを基盤とした“情報マネジメント”へと進化している。
BIM Innovation HUBは、日本でもこの「BIMからIM(情報マネジメント)への進化」を促すことを目的としている。そのために、建設業界の情報マネジメントの国際規格「ISO 19650」などの用語の解説や海外の動向、参考となる情報を発信し、日本で情報マネジメントの理解と実践の促進に貢献したいと考えている。
★連載バックナンバー:
『日本列島BIM改革論〜建設業界の「危機構造」脱却へのシナリオ〜』
日本の建設業界が、現状の「危機構造」を認識し、そこをどう乗り越えるのかという議論を始めなければならない。本連載では、伊藤久晴氏がその建設業界の「危機構造」脱却へのシナリオを描いてゆく。
2023年5月に掲載した日本列島BIM改革論の第8回「BIM Innovation HUBの発足と共通BIM環境の提唱」では、2023年度内の発足を目標としていた。その後、準備に時間を要したものの、2026年4月に活動を開始するに至った。
当初は、組織や企業を越えて誰とでもつながる環境の整備を目指し、「共通BIM標準」の整備を活動の中心に据えていた。共通BIM標準とは、BIMソフトウェアのテンプレート、BIMオブジェクト(ファミリ)、BIMソフトウェアのアドインツールなどを組織や企業を越えて共通化する取り組みを指す。
いずれも重要な技術的要素だが、それだけでは設計変更の削減や建設コストの低減など、BIM本来の成果に到達することは難しい。なぜなら、本質的に重要なのはモデルそのものではなく、プロジェクト全体を通じて「必要な情報を適切に作成し、共有し、活用する仕組み」にあるからだ。
この認識に基づき、技術的要素を情報マネジメントの一部として再整理し、「共有資源」と位置付けた。しかし、Revitテンプレートやコンポーネントファミリ、それらの作成標準を組織や企業を越えて共有することは、BIMソフトウェアを使用した情報を協働生産するために重要なことに変わりはない。
そのため、共有資源として、応用技術のBooT.oneのRevitテンプレートやモデル作成標準などの無償公開ページを用意した。
トップページに掲げる「BIMからIM(情報マネジメント)への進化を促す BIM to IM : The Challenge」は、本取り組みの中核を成すコンセプトだ。この言葉は、英国のIMI Framework(旧UK BIM Framework)のWebサイトで示された「BIM to IM」という考え方に由来する。
BIM to IMという文書には、BIMという言葉の弊害について次のように書かれている。本来BIMは、情報マネジメントを目的とした取り組みだったにもかかわらず、「BIM」という言葉が3Dモデルやソフトウェアを想起させることで、本質とは異なる理解が広まってきた。その結果、BIMソフトウェアを扱わない関係者が、自らはBIMに関係しないと認識してしまうという問題も生じている。こうした背景から、より本質を示す概念として、「情報マネジメント(IM)」という言葉への転換が必要だ。
情報マネジメント(IM)とは、プロジェクト全体を通じて、意思決定に必要な情報を計画的に定義し、作成し、共有し、活用するための仕組みだ。この考え方により、設計・施工・運用の各段階での意思決定の質が上がり、手戻りの削減や生産性の向上、さらにはライフサイクル全体で情報の価値向上も可能になる。
BIM to IMに書かれているように日本でも「BIMからIMへの転換」が不可欠で、その理解と実践の普及が必要となる。私は、これが「日本の建設業界の危機構造を脱却するための道」につながると考えている。
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