パナソニックのベトナム工場は、日本品質の電設資材や照明、室内空調機器の製造拠点として重要な役割を担っている。2014年の稼働開始以降、増築や新棟の建設に加え、生産プロセスでも自動化と内製化を進め、生産能力を強化。配線器具は従来の月産900万台から2030年度までに約1.8倍となる月産1600万台の量産体制を整備する。
パナソニックは海外電材でインド、トルコ、ベトナムを重点3カ国に定め、製品の拡販に注力している。中でもベトナムは、高い経済成長率と若い働き手の豊かさでASEAN随一の魅力がある国だ。交通インフラも陸路に加え、海路や空路でも輸出できる地理的優位性も有する。
パナソニックグループは、ベトナムが日本と国交を樹立する以前からベトナムで事業を展開し、2021年に50周年を迎えた。また、2014年に竣工した工場も生産能力を拡大し、ASEANにおける重要な拠点となっている。
2024年度は現地法人のパナソニック エレクトリックワークスベトナム(PEWVN)が事業を開始して30年で、第一生産棟(工場)の操業開始から10年となる。2024年1月には新しく第二生産棟も本格稼働となるなど節目の年となった。
本稿では、PEWVNがベトナムで如何にして日本品質の製品を製造しているのか、現地取材で得たリアルな取り組みを前編/後編で紹介する。前編の今回は、生産拠点としてのベトナムの魅力と工場の役割を解説する。
“ベトナム”と聞いて、日本人は何を連想するだろうか。食べ物では麺料理のフォー、女性の民族衣装であるアオザイ、そして街にあふれるオートバイなどを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。しかし、ビジネスや経済の切り口でみると、日本とは全く異なる固有の性質が浮かび上がる。
ベトナムは世界でも数少ない社会主義の国だ。ベトナム戦争を経て1976年に「ベトナム社会主義共和国」として独立し、国の歴史はまだ浅い。ただ人口は2023年に1億人を突破し、アジアでは3番目に多く、しかも国民の平均年齢が約31〜32歳と若い。
2020年のデータでは、ベトナムでは65歳以上の高齢者が7.2%しかいない。2023年のデータとなるが日本では65歳以上が29.1%を占める。その点だけでも、ベトナムの国としての活力が容易に想像できる。
経済成長性でも目を見張るものがある。ベトナム工場で会見したPEWVN General Director 坂部正司氏は「1990年代に海外企業による大規模な投資があって輸出が盛んになった。以降、GDPで6〜8%ほどの成長率を維持している」と説明した。
2020年の人口比率は25〜34歳が多く、1975年頃の日本に似ている。坂部氏によれば、1人あたりのGDPも現時点で4000ドルを超え(ホーチミンやハノイに限れば6000ドル超)、1970年台中期の日本と同水準だ。
他にも、ベトナムの国民は手先が器用で向上心が強く、勤勉や真面目といった国民性だ。つまりベトナムには、モノづくり企業にとって好ましい環境がそろっているといえる。
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