世界的な気候変動の影響により、このところ日本各地で、豪雨や台風による自然災害が頻発している。そのため、避難所の拡充などの防災対策には、各自治体でも重点施策の一つと目されている。一方でメーカーサイドでもソリューション開発には余念が無く、とくにパナソニックでは、パナソニック ライフソリューションズ社を中心に太陽光パネルと蓄電池、LPガスを組み合わせ、非常時でも効率的にエネルギーを提供できるシステムを地方自治体向けに提案している。その一例として、群馬県吾妻郡での公共施設リニューアルの実例を現地レポートとしてお届けする。
群馬県吾妻(あがつま)郡は、県西部に位置し、中之条町、長野原町、嬬恋村、草津町、高山村、東吾妻町の4町2村から成り、長野県と接している。吾妻郡では、これまで甚大な災害とは無縁だったという。しかし、最近では2019年10月に発生した台風19号で罹災したことに加え、現在もなお火山活動を続ける浅間山に近いこともあり、災害への備えに対する地域住民の意識は高まっている。
防災を考えるうえで、避難施設の設備を軽視することはできない。施設の照明や空調、給湯といった設備分野でパナソニックは、パナソニック ライフソリューションズ社とパナソニック環境エンジニアリングの保有する技術を軸に、太陽光発電や蓄電池、EMS(エネルギーマネジメントシステム)といったBCP対策に資する各種製品群を市場に供給している。そのなかで、群馬県は「関東電材営業部」の担当エリアとなっており、国策に基づく事業化支援や設備設計で自治体や民間の防災対策を手厚く支援している。
吾妻郡で2021年6月に、パナソニック ライフソリューションズ社の主催で開催された現地見学会から、郡内の6カ町村で4つの公共施設を対象にした防災対策と、パナソニックの防災ソリューションが果たした役割について紹介しよう。
避難施設には、学校の体育館や役場のホールなどの公共施設が指定されることが一般的。公共施設は、平時と非常時でエネルギーの利用状況が大きく異なるため、電力や空調、水などの供給設備には、日常生活と災害避難の双方に対応した能力と堅牢性が求められる。
言わずもがなだが、エネルギーの供給時には運用コストやCO2の排出量も重要となる。吾妻郡では、要求性能に適合するだけでなく、蓄電池で停電時の運用能力も備えるように、避難場所に指定されている9カ所の公共施設をリニューアルし、見学会当日はこのうち4カ所の施設を視察した。
最初に向かった高山村の保険福祉センターは、保険・福祉業務の事務所とデイサービスセンター、児童館・保育所の機能を併せ持つ複合施設。
保険福祉センターは、2000年ごろから供用を開始してから20年以上が経過して設備が老朽化したことで、修繕費がかさんでいた。村でエネルギーコストが2番目に高い施設となっており、省エネ化は急務となっていた。
そこでパナソニックは、エネルギー供給を分散させるリクス軽減型の設備リニューアル提案を行った。
導入した設備は、合計90.4kW(キロワット)の太陽光発電システムをはじめ、150kWhの蓄電池、エコキュート(35kW)の給湯設備、白熱灯のLED化などで、避難所としての機能を拡充しながらも、年間の電力使用量やエネルギーコストの削減が見込める。目標は、年間の電力使用量で約30万kWhから約16万kWhへ減らし、年間のエネルギーコスト(電力、灯油、LPG)も約900万円から約640万円へと圧縮することとしている。ちなみに、CO2の削減目標は約100トンの削減で、杉の木に換算すると約7400本に相当する。
保険福祉センターに導入されたシステムは、電力の供給をLPガス発電機でも可能にしている。平時は電灯線や太陽光/蓄電池などから電力を得るが、災害時に万一それらが消失してもLPガスで発電を補える仕組み。
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