神奈川県の設備工事企業「日建」と富山県の設備工事企業「北陸電気工事」の事例では、どちらも同様の顧客を抱える「水平統合型」に分類される。譲渡側の日建は創業以降、右肩上がりに業績を伸ばし、年間売上は60億円に到達。しかし、企業規模の増大に従って従業員の管理が追いつかず、社内規定の改定に苦心していた。そうした中、プライム上場企業の北陸電気工事とのM&Aを成約した。北陸電気工事の管理システムを導入し、福利厚生も見直して、譲受企業が関東地方へ進出するきっかけもつくった。
「電材ホールディングス」とシンガポールでクレーン工事を手掛ける「Huationg Holdings(ホアチョン ホールディングス)」とのM&Aは「水平統合型」でありながら、海をまたいだ会社統合となった。
HUATIONGは、長年シンガポール国内のインフラを支えてきた企業で、さらなる飛躍を目指し、海外進出をもくろんでいた最中だった。そのときにクレーンや特殊車両のリースなど建設業全般を展開する電材ホールディングスがシンガポールでの施工実績に着目。2社間の海外展開に向けた事業戦略が一致し、業務提携の締結に至った。
木佐木氏は他にも、ファンド企業のマラトンキャピタルパートナーズに会社を売却した神奈川県で大規模修繕工事を主に展開する建設会社「SPJ」の事例にも触れた。SPJは好調な業績でありながら、後継者がいない現状に経営者が危機感を感じ、会社の譲渡を決意。ファンド企業とのディスカッションを通して、新システムの導入や組織体制の刷新など、会社の体制をイチからつくり変えたという。
「従来の事業承継といえば、第1候補に親族を挙げ、難しければ第2候補に現取締役や敏腕の従業員を挙げ、それでも実現し得なかった場合、最後の手段としてM&Aを検討するケースが多かった。しかし、最近は3つの可能性を同時並行で検討していくケースが多い」と木佐木氏。より良い事業承継を実現するためには、自社の強みを改めて理解し、「どの方法が最適か」を客観的な視点で判断できる分析力が必要となる。
会社が今以上に成長するために、最も適した方法は何か。M&Aは、建設業界の課題を解決する可能性を持つ重要な選択肢のひとつとして、注目度を高めている。木佐木氏は、「会社の将来的な成長について悩んでいる経営者は、ぜひ話を聞かせてほしい。ステップアップにつながる手伝いができれば」と言葉を結んだ。
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