長年にわたる人材不足に加え、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる“2025年問題”も重なり、労働力の長期的な確保が一層難しくなっている建設業界。後継者の不在や働き手の枯渇で事業継続が困難となり、買収される企業も多い中、会社成長の観点で“M&A”に活路を見い出す経営者も増えている。先行き不透明な時代に、“前向きなM&A”が活発化している要因とは何か。
「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2024)」(会期:2024年5月22〜24日、幕張メッセ)の特別セミナーA会場で初日の22日、日本M&Aセンターホールディングスの上席執行役員 ダイレクトチャネル部長 久力創氏と、東日本ダイレクト1部(建設業担当) 部長 木佐木隆志氏が登壇。M&Aの仲介企業として累計9000件以上の実績から、「なぜ、昨今建設業界でM&Aが活発になっているのか M&A活用という成長戦略」をテーマに講演した。
初めに壇上へ上がった久力氏は、経営利益や労働生産性の向上に寄与するM&Aのメリットを解説。「『会社をより成長させる』という視点で実現しているケースも多いのが昨今のM&Aの特徴だ。決して、買収されるなどの暗いイメージではない」と力説した。
経済産業省 中小企業庁が集計している「企業活動基本調査」のデータによると、2017年度から2021年度にかけて、M&Aを実施した企業は、経営利益で46%、労働生産性で5%ほど向上しているとのデータも公表されている。一方、M&Aに全く関係していない企業は、前者で18%のアップ、後者でほぼ横ばいに留まっているのを考えれば、どれだけ貢献しているのかが分かるだろう。
さらに近年は、事業承継/引継ぎ補助金、M&Aに伴う減税措置など国からの援助も潤沢。後継者不足に困っている高齢の経営者だけではなく、30〜40代の若手経営者も、今後の成長率をより高める目的で、会社の譲渡に踏み切るケースが増加している。若い経営者は、譲渡後に譲受企業の中で地位を高め、親会社の執行役員にまで昇りつめた例もあるという。「自身をステップアップさせる方法としてもM&Aが選ばれている」と久力氏はうなずく。
特に建設業界は、M&Aがより成約しやすい業種といえる。過去に日本M&Aセンターホールディングスで成約した案件をジャンル別に分けると、全体の24%が建設業界の企業だ。
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