建設業界で“前向きなM&A”が増加 大手仲介企業がM&A活用の成長戦略と成功例を解説第6回 建設・測量生産性向上展(1/3 ページ)

長年にわたる人材不足に加え、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる“2025年問題”も重なり、労働力の長期的な確保が一層難しくなっている建設業界。後継者の不在や働き手の枯渇で事業継続が困難となり、買収される企業も多い中、会社成長の観点で“M&A”に活路を見い出す経営者も増えている。先行き不透明な時代に、“前向きなM&A”が活発化している要因とは何か。

» 2025年03月03日 10時44分 公開
[坂入太陽BUILT]

 「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2024)」(会期:2024年5月22〜24日、幕張メッセ)の特別セミナーA会場で初日の22日、日本M&Aセンターホールディングスの上席執行役員 ダイレクトチャネル部長 久力創氏と、東日本ダイレクト1部(建設業担当) 部長 木佐木隆志氏が登壇。M&Aの仲介企業として累計9000件以上の実績から、「なぜ、昨今建設業界でM&Aが活発になっているのか M&A活用という成長戦略」をテーマに講演した。

M&A仲介企業のパイオニアとして、業界をけん引している日本M&Aセンターホールディングス。国内7拠点の他、海外にも5拠点を保有し、近年は東南アジア企業の出資や市場開拓/人材発掘を狙う企業の後押しも行う M&A仲介企業のパイオニアとして、業界をけん引している日本M&Aセンターホールディングス。国内7拠点の他、海外にも5拠点を保有し、近年は東南アジア企業の出資や市場開拓/人材発掘を狙う企業の後押しも行う 撮影は全てBUILT編集部

譲渡/譲受双方のメリットになるM&Aの魅力

日本M&Aセンターホールディングス 上席執行役員 ダイレクトチャネル部長 久力創氏 日本M&Aセンターホールディングス 上席執行役員 ダイレクトチャネル部長 久力創氏

 初めに壇上へ上がった久力氏は、経営利益や労働生産性の向上に寄与するM&Aのメリットを解説。「『会社をより成長させる』という視点で実現しているケースも多いのが昨今のM&Aの特徴だ。決して、買収されるなどの暗いイメージではない」と力説した。

 経済産業省 中小企業庁が集計している「企業活動基本調査」のデータによると、2017年度から2021年度にかけて、M&Aを実施した企業は、経営利益で46%、労働生産性で5%ほど向上しているとのデータも公表されている。一方、M&Aに全く関係していない企業は、前者で18%のアップ、後者でほぼ横ばいに留まっているのを考えれば、どれだけ貢献しているのかが分かるだろう。

M&Aを実施した企業としなかった企業では、その後の業績や労働生産性に大きな差が M&Aを実施した企業としなかった企業では、その後の業績や労働生産性に大きな差が

 さらに近年は、事業承継/引継ぎ補助金、M&Aに伴う減税措置など国からの援助も潤沢。後継者不足に困っている高齢の経営者だけではなく、30〜40代の若手経営者も、今後の成長率をより高める目的で、会社の譲渡に踏み切るケースが増加している。若い経営者は、譲渡後に譲受企業の中で地位を高め、親会社の執行役員にまで昇りつめた例もあるという。「自身をステップアップさせる方法としてもM&Aが選ばれている」と久力氏はうなずく。

 特に建設業界は、M&Aがより成約しやすい業種といえる。過去に日本M&Aセンターホールディングスで成約した案件をジャンル別に分けると、全体の24%が建設業界の企業だ。

譲渡企業の中には、10億円以上の売り上げを持つ企業も少なくない。必ずしも不良債権処理を目的とした目的だけではなくなってきている 譲渡企業の中には、10億円以上の売り上げを持つ企業も少なくない。必ずしも不良債権処理を目的とした目的だけではなくなってきている
M&Aを実施した業界別にみると、建設業界の割合はトップの24% M&Aを実施した業界別にみると、建設業界の割合はトップの24%
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