ドローンを活用した支援活動は、遭難者の捜索、被災状況や仮設住宅の建設予定地の調査、地滑りの兆候が見られる場所の把握、道路や港湾、橋梁(きょうりょう)の点検、医薬品などの支援物資の輸送など多岐にわたる。
植田氏は「発災直後は、被災者の捜索や被災状況の現況調査など緊急性の高い案件に注力した。その後、橋梁などのインフラ点検へと活動領域を拡大していった。特に牛尾川では土砂ダム形成に伴う河道閉塞の監視に自動発着システムを導入し、定期観測を行った」と説明し、現場の状況変化に即応して支援内容を柔軟に変え、その結果10件の支援ニーズに対応したという。
植田氏は、「被災地でのドローン飛行は完全に目視外飛行となる。これだけの数の機体が事故なく、無事に運用できたことは重要な成果だ。今後の地震や台風被災地での支援活動はもとより、過疎地や離島への物資輸送など、平時の活用を実現するうえでも、今回の経験は重要な糧となる」とし、能登半島での災害支援活動を機にドローン活用が実証段階から社会実装のフェーズへ大きく前進したのではないかとの見方を示した。
一方、実践を通じて新たな課題も見えてきたという。最も顕在化したのは、「ドローン運航管理システム(UTM:UAS Traffic Management)」の必要性だ。今回は有人航空機と空域を共有しており、事故なく支援活動を終えられたものの、ヒヤッとする場面もあったとの報告も届いている。特に小型のドローンは視認性が低く、ヘリコプターとの接近リスクが懸念された。植田氏はこうした経験から「飛行スケジュールやデータを一元管理するシステムの整備が不可欠との認識が深まった」と語る。
また、被災地入りする支援企業へのバックアップ体制も重要な課題となった。能登半島地震では完全なボランティアベースで実施し、支援活動の長期化に伴い企業の負担が増大してしまった。植田氏は官民連携だけでなく、支援に回る民間企業への制度的サポートの必要性も訴えた。
地震や台風など自然災害が年々激甚化する中で、能登半島での震災のように、アクセス困難エリアでの活動が可能なドローンへの期待は一層高まっている。今展でのJUIDAの展示は、ドローンの社会実装に向けた課題を浮き彫りにしつつも、今後の防災や減災を考える際に新たな選択肢を提示する機会となっていた。
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