VR500は、小型建機向け一体型のGNSSスマートアンテナで、コンマ45(0.45立方メートル)の建機にも対応する。VR1000は、コンマ7(0.7立方メートル)以上の中〜大型建機用のアンテナが分離した高精度GNSSコンパスだ。両製品とも、マルチGNSS(多周波数GNSS)とRTK-GNSS測位技術を用いて高精度な位置と方位の計測が可能だ。
ICT建機には通常、位置と旋回角を測るために、2つのGNSSアンテナを設置する。中〜大型の建機向けVR1000を用いるシステムでも、GNSSアンテナを2つ使用する。一方、小型建機の場合、推奨されるアンテナ間の距離2メートルを確保するのが難しい。こうした問題を解決するのがVR500で、2つのアンテナを1つの躯体に収め、方位角センサーで補正する。
さらにVR500は、小型建機の大部分がFRP製で機器の溶接が困難なことを考慮し、マグネットでキャビン上部に装着できる。笹原氏によると、コンマ1(0.1立方メートル)クラスの建機に装着した実績があるという。
また、通常はマシンガイダンスシステムの導入が難しいとされるオフセットブーム仕様のバックホウにも取り付けられる。そのため、小規模土工の施工効率の向上に貢献することが期待される。
「GradeMetrix(グレードメトリックス)」は、多機能マシンガイダンスシステムのアプリケーションだ。VR500とVR1000をはじめ、ミニショベルから大型機まで幅広く対応し、2Dと3Dのガイダンス機能を素早く切り替えられる。2Dで任意の設計や事前登録したバケットの作業別選択が可能で、DWGやDXG、LandXMLなどの業界標準のファイル形式をサポートするなど使い勝手もよい。
笹原氏は、VR500、VR1000、GradeMetrixの採用により、低コスト化や小型建機へ対応などが可能になると確信する。取り付け作業の煩雑さは、従来システムと大差がないが、機能面で優れているため、採用する価値は十分あると強調する。
また、笹原氏は国内初の試みとして、ホイルローダー(タイヤショベル)にGradeMetrixとVR500を搭載したマシンガイダンスシステムを紹介した。ホイルローダー対応のきっかけとなったのは、「小規模現場ではホイルローダーとブルドーザーの2台を停めるスペースが確保しづらく、オペレーターも複数人が必要となる」と道路工事事業者から相談を受けたことで、へミスフィア ジャパンと岩崎、ユナイトの3社で検証し、バケットタイプの実用化に成功した。
最後に笹原氏は、今後の展望として、多雪地域での除雪作業にICT建機を活用する構想を口にした。現在、マルチプラウ(除雪ブレード)に対応する除雪用タイヤローダーのシステムの検証を進めており、2025年度のCSPI-EXPOでの発表を目指している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.