建設業界の人材不足と技術革新をテーマにしたCSPI-EXPO 2024の講演で、カナモトは建機整備士不足の深刻化を指摘し、業界共通のプラットフォーム構築を提案した。一方、共同講演のグループ会社ユナイトは、小規模現場でICT建機を活用する際のハードルとなっているコストや取り付けの複雑さなどを解消するソリューションを紹介した。
建機レンタル企業のカナモトとグループ会社のユナイトは、「第6回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO 2024)」(会期:2024年5月22〜24日、幕張メッセ)の特設セミナー会場で建機メンテナンスの課題解決と小規模現場でのICT建機活用について講演した。
登壇者はカナモト 取締役 レンタル事業部長 渡部純氏と、ユナイト 営業本部 広域営業部副部長 笹原久之氏。
カナモトの渡部氏は、これからの建機アフターサービスに立ちはだかる指定工場の廃業や整備士不足に対する解決策を提示した。
カナモトは、建機レンタルで国内2位のシェアの大手レンタル企業だ。創業地の北海道を中心に、全国500以上の拠点を有し、油圧ショベルの保有台数は約5000以上、所属する機械整備士は約900人に上る。
渡部氏は、現在の建機業界が直面している人材不足について言及し、建機整備不足が顕在化しており、このままでは整備作業が滞るとの危機感を示した。
社会保障・人口問題研究所が2023年4月に公表した「日本の将来推計人口(2023年推計)」によると、2040年には日本の生産年齢人口が2020年比で約2割減少すると予測されている。就業者の高齢化も進み、特に建設業界では55歳以上の就業者の割合が全産業平均を上回るペースで増加している。一方で、建設業界で29歳以下の若手就業者は微増にとどまり、近い将来は担い手不足が深刻化すると懸念されている。
国土交通省は2024年4月に「i-Construction 2.0」を発表。人口が一層減少すると予測される中で、インフラの整備や維持管理を持続可能にするため、建設現場(施工/データ連携/施工管理)のオートメーション化を通じて、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍向上させる目標を打ち出した。
渡部氏は、こうした国の施策もあり、建機の遠隔操作や自動化が「業界のメガトレンド」になるとの見解を示しながら、どんなに先進的な建機でも稼働し続けるには、地方を含めたアフターサービス体制の維持が不可欠だと指摘する。しかし、「地方では整備士不足で整備事業者が廃業する例が多く、現状のままではサービス体制の確保が困難になる」と断言した。
渡部氏は、2024年5月に発表された日本郵便と西濃運輸の長距離共同輸送に関する業務提携を引き合いに出し、建機整備もコンソーシアムを立ち上げて、建機アフターサービスのための業界共通プラットフォームを構築すべきだと提案した。「地方では、これまでメーカー各社がそれぞれ指定工場や整備工場を運営してアフターサービスを行ってきた。ただ、整備事業者の廃業が続く地方では今後、少人数の整備士が複数のメーカーの建機を整備しなければならなくなる。その対応には、アフターサービスに関する業界共通のプラットフォームが欠かせない」(渡部氏)。
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