Liberawareが開発した狭小空間点検ドローン「IBIS」が、福島第一原子力発電所の1号機原子炉格納容器の調査に採用された。ドローンによるペデスタル内の気中部調査は初の試みで、これまで確認ができていなかったエリアの撮影に成功した。
Liberawareは、東京電力ホールディングスが2月28日と3月14日に実施した「福島第一原子力発電所」の1号機原子炉格納容器の内部調査で、狭小空間点検ドローン「IBIS(アイビス)」が活用され、これまで確認ができていなかったエリアの撮影に成功したと2024年4月5日に明らかにした。
福島第一原子力発電所 1号機原子炉格納容器(以下、PCV)内部調査で、これまでは主に地下階の調査が中心だったが、PCV全体の状況を把握することを目的に、内部の気中調査が計画された。ペデスタル内の気中部を調査することは、2011年の東日本大震災以降初めての試みで、ドローンを活用することも初となる。
IBISを用いた調査は2日間で行い、計4機のIBISを使用し、原子炉格納容器貫通孔(X-6ペネ)やペデスタル内壁など、今まで確認できなかったエリアを撮影。1日目の2月28日は、ペデスタル外側の気中部を調べ、原子炉格納容器貫通孔(X-6ペネ)や制御棒駆動機構(CRD)の交換用開口部、レールなどが現時点で大きな損傷が無いことを確認した。
2日目の3月14日には、ペデスタル内部の気中部を対象に、ペデスタル内壁、ペデスタル内構造物、制御棒駆動機構(CRD)ハウジングの落下状況などを調査。映像からは、内壁のコンクリートに大きな損傷がなかったこと、制御棒の駆動機構交換用開口部付近につらら状や塊状の物体があることなどが分かった。
IBISの選定理由としては、狭小空間を安定飛行することに特化して開発した機体で、寸法が20センチ四方と小さく、超高感度カメラとLED照明で暗所であっても鮮明な映像を撮影することが可能な点が評価された。また、PCV内部は床面に障害物もあり、溝や段差もあるため、障害物の無い空中部分を往来できるドローンは、地上を這うタイプのロボットよりもスタックする可能性が低いと考えられた。
Liberaware 代表取締役CEO 閔弘圭氏は、11年前に千葉大学での原発事故後の建屋内を自律飛行するドローン開発プロジェクトに参加したことが、ドローンとの出会いだったという。今回のIBISを活用した調査を受け、「プロジェクト自体は実証実験を最後に終えたが、11年の時を経て、再びそのミッションに挑戦する機会を得た。今回はLiberawareの一員として、過去に私が果たせなかった夢を現実のものとし、社会に貢献できたことに心からの喜びを感じている」とコメントしている。
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