Japan Drone 2023−Expo for Commercial UAS Market−

ドローンセキュリティガイドを公開した「セキュアドローン協議会」に聞く(前編)―“レベル4”で高まるドローンリスクドローンがもたらす建設業界の“ゲームチェンジ”(1/2 ページ)

2022年度中に人口集中地区(DID)での目視外飛行(レベル4)が解禁されることを見越し、建設業界でも活況を呈する日本のドローン産業。本格的な社会実装を目前に、測量や点検などで活躍の場が広がる建設業も含めて、ドローンに従事する者がいま心構えておくべきこととは何だろうか。

» 2022年07月21日 06時21分 公開
[加藤泰朗BUILT]

 日本最大級のドローン国際展示会「Japan Drone2022」(会期:2022年6月21〜23日、幕張メッセ)の会期中、IT企業が中心となってドローンの安心安全な操作環境とセキュアな業務活用を掲げる非営利法人のセキュアドローン協議会 会長 春原久徳氏にインタビューを敢行。2022年6月20日から始まった機体登録やリモートID制度、2022年度内にも解禁が見込まれる“レベル4”解禁を踏まえ、ドローンを安全安心に運用するためのセキュリティ対策や建設業も含む日本のドローン産業が目指すべき未来像をうかがった。

ドローンの社会実装を視野に入れた「ドローンセキュリティガイド 第3版」

 「ドローンの産業活用をセキュアに」をパーパスに掲げるセキュアドローン協議会。設立は改正航空法施行前の2015年6月で、日本のドローン関係団体のなかでは比較的古い歴史を持つ(ちなみに日本のドローン産業をけん引する日本UAS産業振興協議:JUIDAは2014年7月設立)。当初は任意団体からスタートし、2016年には一般社団法人に法人成りして、現在に至る。

 会の名称に「セキュア」と謳(うた)っているが、設立時点では農業分野をメインに、ドローンで何ができるのかを検証する活動をしていた。「協議会のメンバーにIT系出身が多かったこともあり、“農業×情報”というアプローチで、農業リモートセンシング(モノに直接触れずに調べる技術)などを中心に検証していました」と、会長の春原久徳氏は述懐する。

春原 久徳 / Hisanori Haruhara セキュアドローン協議会 会長。ドローン・ジャパン 取締役会長。ArduX Japan 取締役会長。三井物産のIT系子会社で12年間勤務後、日本マイクロソフトで、PCやサーバの市場拡大に向け、日本や外資メーカーと共同で戦略的連携を担当した。2013年からドローンビジネスに身を投じ、2015年にセキュアドローン協議会 会長に就任。同年12月にはドローン・ジャパンを設立。現在は、各産業業界誌で多数執筆しているほか、農林水産省、NEDO、業界団体でのドローン関連の講師を年間60〜80回程度務める。

 協議会が初めて、ドローンに関するセキュリティの啓発ガイドブック「ドローンセキュリティガイド」を公開したのは、2018年3月のこと。「その時点では、具体的なセキュリティ対策の方法というよりは、セキュリティの考え方を整理するというやや概念的な内容だった」(春原氏)。

 しかし、2020年に内閣府サイバーセキュリティ戦略本部が「サイバーセキュリティ2020」を公開し、日本全体のサイバーセキュリティ戦略を提示すると、それを受けて協議会でも2021年4月にセキュリティ対策の要件やセキュリティリスク分析、リスク管理など、具体的な対策に踏み込んだ第2版を公開。その約1年後の2022年6月14日には、「クラウドを使用したドローンの認証」「リモートID」など、解禁が直前に迫った「有人地帯(第三者上空)での補助者なし目視外飛行」=レベル4飛行を視野に入れた第3版を公表した。

「ドローンセキュリティガイド 第3版」

社会実装のフェーズで予測される3つの懸念点

 春原氏は現在の国内でのドローン状況を鑑みて、セキュリティリスクが高まっていると警鐘を鳴らす。背景には、ドローン活用のフェーズが実証実験から社会実装に移行してきたことと、大手通信キャリアでLTEの上空利用が始まったことの2つの要因があるという。

 まず、ドローン活用のフェーズが社会実装に移行することの影響については、「これまでの実証実験では、運搬や監視など何ができるかが重視され、悪意ある第三者からの攻撃を含めた“セキュリティ”はほとんど検証されなかった。だが、日常的に都市の上空を飛び回るようになれば、ドローン活用のリスクも考慮したセキュリティ対策は不可欠となる」と語り、春原氏は社会実装フェーズでのドローン活用のリスクを「コンプライアンス違反」「ブランドイメージの毀損(きそん)」「情報漏洩(ろうえい)」の3点に整理した。

 このなかで、コンプライアンス違反は、ドローンを操縦するためには、航空法や道路交通法、電波法、民法などの関連法令だけでなく、業種業態に関するさまざまなルールに従わなければならない。「意図せず飛行禁止区域に侵入するなど、コンプライアンス違反を犯すことが想定される」(春原氏)。

 次のブランドイメージの毀損について、春原氏は現時点で一番大きなリスクだと捉えている。「幸いなことに、実証実験段階では、人が亡くなったり重症を負ったりといった大事故は起きてはいない。ただし、実運用となれば、機体トラブルでドローンが墜落したり、あるいは悪意ある者が何らかの方法でドローンを墜落させたりということが起こり得る。万が一、死亡事故が発生すれば、人的被害だけでなく、ニュースとしてメディアに取り上げられることで、ブランドイメージを損なう間接的な損失も生じるだろう」(春原氏)。

 3点目の情報漏洩は、飛行しながらさまざまなデータを収集するドローンは、データが流出する危険性に常に晒(さら)されている。

ドローン活用の3つのリスク 提供:セキュアドローン協議会
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