最後に登壇したグローバルBIMの林氏は、完成度の高いBIMモデル構築をテーマに、「オープンCDE」を活用したワークフローを紹介した。
林氏は、現在の建設ワークフローでBIMがどのように活用されているかを紹介した。基本設計から実施設計までのワークフローで、工事に参加する会社間のデータ調整やモデルの更新業務に特に多くの時間が割かれていることに注目し、BIMモデル運用の課題が「調整業務の効率化にある」とした。課題解決には、CDEが大きな役割を果たすとの見解を示した。
林氏は、CDEと呼ばれるアプリケーションには“クローズドCDE”と“オープンCDE”の2種類があり、使用シーンに合わせて適切なアプリケーションを選択することが大切とする。クローズドCDEは、社内関係者間でのデータ共有に使用するもので、セキュリティの高い社内データなどを扱う際に有効。一方オープンCDEは、プロジェクトの関係者全体でデータを共有するもので、IFC形式のモデルデータや多種多様なドキュメントデータ共有する場合に適している。
完成度の高いBIMモデルを効率的に構築するには、オープンCDEが欠かせないとし、ノルウェーのオスロに拠点を置くCatendaが開発し、グローバルBIMが日本で販売するオープンCDEアプリケーション「Catenda Hub(カテンダハブ)」の機能や活用のメリットを紹介した。
林氏がCatenda Hubの機能として取り上げたのは、「ダイレクトリンク」。アドインで各社のオーサリングソフトと直接つながれる機能だ。
従来型の建設プロジェクトのデータワークフローは、共有データサーバを介してデータをやりとりしており、データの取りまとめやデータ形式の変換に手間が掛かった。Catenda Hubのダイレクトリンク機能を使えば、各社のモデル作成ソフトで作成したBIMモデルやICFデータ、BCF(BIM Collaboration Format)データを直接インポートまたはエクスポート可能で、作業人数やコストの大幅に削減につながる。膨大な回数を繰り返すデータ更新などの場面では、強力な武器になる。
他にもCatenda Hubには、APIをオープンにしており、他社ソフトとの連携と開発がスムーズで、発注者も含めてCDE環境を閲覧できるため、関係者が多い現場でも質疑や回覧を効果的に進められる。多くのCDEソフトが採用する従量課金制ではないため、ランニングコストを抑えられるなどのメリットがある。
仮に設計初期段階からCatenda Hubを導入すれば、着工前に完成度の高いモデルを作って、仮想の竣工検査も可能になる。さらにCatenda Hub内にアーカイブされる工期中に作成したIFCデータを活用すれば、建物完成後のIoT連携などでも効果を発揮する。
講演をまとめるにあたって林氏は、「調整業務の効率化はBIMデータ活用のスタートラインで、将来はファシリティマネジメント(FM)や都市DX、ロボットのマッピングといったIoTデータとの連携でBIMモデルの活用は進むだろう」と述べた。その際に重要なのは、「今ストックしたデータを2030年にも活用できる」という恒久性であり、それを実現するのがIFCだと強調した。
そして、各社のオーサリングソフトとダイレクトにリンクするオープンCDEを使ってIFCでデータを運用することが、実務に即した一意性のあるワンモデルBIMとなる。そのためのツールとして、Catenda Hubの活用も検討してほしいと提案した。
林氏は「BIMデータの価値は、設計・施工領域だけにはとどまらない。その価値を適切に引き出すためには、精度の高いモデルを設計の早い段階で構築することが重要だ。2009年のBIM元年に始まる日本のBIMは、これからはBIMを活用する時代を迎える。新しい時代に立ち向かうためにオープンCDEの活用に真剣に取り組む必要がある」との持論を述べ、壇上を後にした。
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