さらに矢野氏は、国土交通省が示すロードマップ「建築BIMの将来像と工程表」をもとに、国内のBIM動向に触れた。特に建築確認申請で、2025年4月に国際規格IFC(Industry Foundation Classes)データの提出が始まり、2028年度以降はさらなるBIM高度利用が計画されていることに注目し、「IFCフォーマットや共通データ環境(CDE)など、BIM関連の国際規格を活用するオープンBIMが重要になる」と予測する。
鹿島建設のBIM推進の取り組みでは、「建設RXコンソーシアム」内に設備BIM分科会を設立。分科会ではBIMとIoT連携がデジタルツインのキーテクノロジーになりつつある中で、「竣工後のBIMデータ活用を見据え、設計・施工のワークフローで設備BIMモデルをいかに精度よく早く構築できるかが大きな課題となっている」とした。
矢野氏は他にも、建物の運用段階と建物のライフサイクルに適したBIMデータの活用事例として、鹿島建設が関わる「羽田イノベーションシティー」を取り上げ、今後、3Dモデルを作ることが当たり前の時代になり、IoTやロボット、3D都市モデルとの連携、スマートシティーのデジタル基盤など、BIM活用は分野を超えて広がるだろうと予想。「これまでの建設業は、BIMデータの価値は設計・施工段階にあったが、今後は上流および下流を含むライフサイクル全般全体でのデジタル活用が求められる。BIMデータも、これらの新しいサービスやソリューションと結び付くことで、BIMデータそのものに新たな価値(value)を創造していくことになるだろう」と展望を明かした。
最後に、i-Construction推進コンソーシアムや2020年のBIMガイドライン発行など、2017年から鹿島建設が関わるBIM推進や建設DXの加速に向けた活動について振り返り、官民問わず業界全体で協働しながらさまざまな取り組みを実施し、BIM推進に尽力してきたと述べた。
2050年までに想定される出来事が業界に与えるインパクトは、「作業員不足で建てられないことは、たいした問題でなくなる」との見方を口にした。そして、「建設業は技術の進歩に合わせて大きく姿を変える必要があり、鹿島建設も時代に取り残されることなく、業界が一丸となって難局に向かっていきたい」との意気込みを語り、自らの講演を締め括った。
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