続いて壇上に上がった足達氏は、国内外でのオープンBIMの活用事例と共通データ環境(CDE)の重要性について語った。
足達氏はオープンBIMを、建設ライフサイクル全体で、多様な関係者をつなげてコミュニケーションやコラボレーションを向上させるBIM手法と評価し、「IFCを活用することで、さまざまなソフトウェアやソリューションの参加や長期的かつ持続可能な相互運用性が実現する」と位置付けた。
IFCに基づき、BIM確認申請を推進するシンガポールとフィンランドの事例と、日本で2025年から試行されるBIM確認申請の話題を挙げ、国内外でオープンBIMの仕組みやIFCの重要性が増していると強調した。
さらに足達氏は、BIMモデルが持つ設備関連も含めた多様な情報が、3D都市モデルやスマートビル、物流、ロボット連携などで、重要な情報源になることに多くの人が気付き始めていると指摘した。事実、国土交通省が進める都市デジタルツイン実現プロジェクト「Project PLATEAU(プラトー)」では、IFCを活用したBIM連携が進んでいる。国土交通省は、東京ポートシティー竹芝などのBIMモデルをIFC経由で、3D都市モデル(PLATEAU)と統合する実証実験を数年前に実施した。その結果をもとに、BIMモデルを3D都市モデルで活用するためのマニュアル「3D都市モデル整備のためのBIM活用マニュアル」を2021年に策定し、現在は第3.0版がPLATEAUの公式Webサイトで公開されている。
足達氏はBIMとPLATEAUとの連携について、「PLATEAUで整備される3D都市モデルは、基本的には航空写真データなどから作成される屋外データ。BIM(ICF)モデルが連携することで3D都市モデルに屋内空間の情報が取り込まれ、都市計画、防災、環境、エネルギー管理などをより高度に処理できるようになる」と期待を寄せる。
足達氏は、不動産IDとの連携や行政分野のデジタル化、物流やスマートビル、ロボット連携、ビルOSに必要となる建物のデジタルツインとの連携など、さまざまなユースケースの発展が現実的になっているとし、「BIMを軸とした都市の空間情報がIoTセンサー情報を中心とする都市の活動情報と相まって、ブロックチェーンや分散データベースといった技術との融合で、建築都市データの流通基盤となり、最終的には建築/都市DXに至る」と見通しを語った。
一方で足達氏は、こうした状況を踏まえ、「都市デジタルツインの基盤となるBIMモデルをいかに効率的に精度よく作成できるかが、業界に問われる課題だろう」と予測する。そのうえで、建設プロジェクトでは施工段階だけでも複数のモデルが混在し、プロジェクト期間中は多様な問題が発生して、関係者がコミュニケーションをとりながらモデルを調整、修正、更新するというサイクルを何度も繰り返す。そのため、「1つのモデルだけで管理するのは現実的ではない。現段階でのベストプラクティスは、複数のモデルをIFCで重ね合わせながら総合調整することで、それをサポートするのが共通データ環境(CDE)だ」と力説した。
CDEは、BIMの情報マネジメントを示す国際標準「ISO 19650」で規定された共通データ環境のこと。プロジェクトの情報を「作業中」「共有」「公開」「アーカイブ」の4つのステータスに分けて運用し、「BIMプロジェクトでは、作業中と共有をデータが何度も行ったり来たりしながら進められる。その際のコミュニケーション、コラボレーションをサポートするのがCDEの最大の機能だ」(足達氏)。
足達氏は、「作業中と共有スペースでのやりとりを経て整えられたBIMモデルが、より詳細な設計や施工、さらにアセットマネジメントに使用する情報として公開され、アーカイブされることで、建築と都市のDXに貢献するものとなる」との考えを示し、講演のバトンを林氏に渡した。
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