NECは、設計BIMを活用し、建築現場でのスリーブ管検査を大幅に効率化する技術を開発し、2024年度内に実用化を目指す。新技術は、スマホやタブレットでスリーブ管を撮影するだけで、BIMデータと照合し、5ミリ以下の誤差を数秒で計測する。
NECは2024年4月11日、設計BIMデータを活用し、建築現場でスリーブ管の設置検査を効率化する技術を開発したと発表した。
新技術は、ARマーカーを設置せず、スマホやタブレット端末に搭載されたカメラでスリーブ管が配置されたエリアを撮影するだけで、自動でBIMデータと照合し、5ミリ以下の設置誤差を数秒で計測する。撮影に用いた写真はそのまま検査帳票として保存可能なため、現在人手で行っている検査作業の大幅な効率化が実現する。今後、建築現場で実証を進め、2024年度内に実用化を予定している。
給排水管や各種設備配管の貫通孔を、コンクリート打ち込み時に確保するために用意する“スリーブ”と呼ばれる管は、位置ずれがあるままで工事が進むと後々の修正が高コストになるため、設置位置が設計図面通りであるかミリ単位での検査精度が要求される。そのため、業務の効率化や高精度化が求められている。
今回、NECの独自開発した「BIM-2D画像照合技術」により、鉄筋コンクリート構造物のスリーブ管の設置位置を、タブレット端末で撮影した写真とBIMデータとを自動的に位置合わせで、設置誤差を計測する。
BIMデータとの自動照合は、さまざまな位置から撮影された画像からスリーブ管の上面を楕円集合として検出し、BIMデータ上のスリーブ管位置となる円集合との照合を自動で行う。楕円集合と円集合とを紐(ひも)付ける変換を計算する際に、少数の楕円から全ての楕円へと探索範囲を段階的に変化させることで、高精度かつ高速な計算を実現した。
通常、ARマーカーなしで撮影した画像で楕円に写ったスリーブ管と、BIMデータ上に円で示されたスリーブ管の位置とを対応付けるのは困難。今回の技術は、斜めからのスリーブ管の画像を楕円集合として捉え、BIMデータの円集合と照合できるように、その向きを整合し(正面化)、円集合との誤差を計測して関連付ける変換を行う。そのため、現場でのARマーカーの設置が不要となる。
現場のスリーブ管配置は、その上面の高さが厳密ではなく、数ミリ〜数センチのばらつきがある。ARマーカーを用いる場合、ばらつきに関わらずARマーカーは高さをそろえて同じ平面上に配置する必要があるが、スリーブ管上面のばらつきは検査結果に大きく影響する。新技術ではスリーブ管ごとの高さのばらつきも推定し、補正して計測するため、スリーブ管の高低にとらわれず高精度な計測ができる。
今後、NECは2024年度中に、建設現場での実証を進める。その知見を生かし、スリーブ管の配置検査以外の人手による施工管理や検査業務への適用拡大も検討していく。
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