明大 生田新校舎で挑戦した日建設計の設計BIM 基本計画から実施設計まで「BIMで考える、BIMと考える」Building Together Japan 2023(1/4 ページ)

日建設計の茂住勇至氏は、明治大学 生田キャンパスの新校舎設計で、プロポーザル段階から、基本設計、実施設計に至るまで、BIMソフトウェア「Archicad」を活用した。設計業務では、基本計画の大学側との合意形成や日影シミュレーション、100分の1の詳細度でBIM作成などの新たな設計BIMの試みに挑んだという。

» 2024年02月13日 10時22分 公開
[加藤泰朗BUILT]

 グラフィソフトジャパンは2023年10月、オンラインイベント「Building Together Japan 2023」を開催した。ゲスト講演者として登壇した日建設計 設計監理部門 プロジェクトアーキテクト 茂住勇至氏は、「BIMで考える、BIMと考える」と題し、自らのBIM活用事例を紹介した。

明治大学 生田キャンパス 第二中央校舎プロジェクトでのArchicad活用例

日建設計 設計監理部門 プロジェクトアーキテクト 茂住勇至(もずみゆうじ)氏 日建設計 設計監理部門 プロジェクトアーキテクト 茂住勇至(もずみゆうじ)氏

 茂住氏は、2015年に明治大学 理工学部 建築学科を卒業し、東京藝術大学大学院 美術研究科 建築専攻を修了後、2017年に日建設計に入社。2023年現在は、設計監理部門プロジェクトアーキテクトに属する。

 始めてArchicadに触れたのは学部2年生の頃。先輩に「平面図を描くと同時に断面図が作成されるソフトがある」と紹介されたことがきっかけだった。

 当時は、3D作図には3Dモデリングソフトウェア「SketchUp(スケッチアップ)」、2D作図には「Vectorworks(ベクターワークス)」を使用する学生がほとんどで、Archicadのユーザーは少なかった。それでも茂住氏は、学部の設計課題から卒業設計、コンペ、大学院の修了制作までArchicadを使い続けた。「当時は設計図書の作図よりは主にグラフィック制作や3DのモデリングにArchicadを使用していた」と振り返る茂住氏だが、日建設計に就職後はさまざまな実務やプロジェクトにArchicadを活用し、使用歴は10年に及ぶ。

 今回は、茂住氏が手掛ける母校の明治大学 生田キャンパス 第二中央校舎(仮称)整備計画でのArchicadの活用例を取り上げた。

第二中央校舎は、3つの場とつながる新校舎

 神奈川県川崎市に位置する明治大学の生田キャンパスで計画されている「第二中央校舎(仮称)整備計画」は、既存の生田図書館北側隣接地に新校舎を建設し、2つの軸(アカデミックモール/キャンパスモール)で、中央広場、クリエイティブプラザ、ライブラリープラザの3つの場をつなぐ。整備範囲は外構を含めると約1.8万平方メートル。2025年末に竣工し、翌2026年の新学期にオープン予定の約3年がかりのプロジェクトだ。

明治大学生田キャンパス第二中央校舎(仮称)整備計画。新校舎の規模は建築面積が2975.27平方メートル、延べ床面積は1万3278.53平方メートル、地上6階建て(地下なし)の高さ30.80メートルで、主体構造はRC一部S造(接続ブリッジ) 明治大学生田キャンパス第二中央校舎(仮称)整備計画。新校舎の規模は建築面積が2975.27平方メートル、延べ床面積は1万3278.53平方メートル、地上6階建て(地下なし)の高さ30.80メートルで、主体構造はRC一部S造(接続ブリッジ)

 新校舎は6階建てで、低層部(1〜3階)には図書館、4〜6階には教室がそれぞれ入る。建物各所にラーニングコモンズを配し、中央に設けたセンターコモンズと呼ばれる吹抜け空間で、図書館、教室、ラーニングコモンズを融合させる断面構成を持つ。庇の出寸法や柱形状、設備容量の適正化で、ZEB Ready相当の省エネ性能を実現する計画だ(増築部単体)。

新校舎の断面構成
プロジェクトの制作体制。スタッフ1が茂住氏。フェーズに合わせてスタッフを増員しながら計画を進めている。実施設計初期からはBIMオペレーターが2人加わり、講演時には彼らのサポートを受けながら既に確認申請までを終えていた プロジェクトの制作体制。スタッフ1が茂住氏。フェーズに合わせてスタッフを増員しながら計画を進めている。実施設計初期からはBIMオペレーターが2人加わり、講演時には彼らのサポートを受けながら既に確認申請までを終えていた
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.