日立製作所は、災害状況の把握に特化した独自AIで、東京都の災害対応を高度化する「高所カメラ被害情報収集システム」を開発した。
日立製作所は、東京都に向け、災害発生直後の限られた情報しか取得できない「情報空白時間」の情報収集を目的とした「高所カメラ被害情報収集システム」を開発し、2024年3月1日から本格稼働を開始した。
高所カメラ被害情報収集システムは、都庁などに設置されている高所カメラで撮影した俯瞰的な市街地の画像を、災害状況の把握に特化した日立独自の映像解析AIでリアルタイムに解析する。画像内の大規模な火災/煙/建物の倒壊を自動検知し、発災地点の特定や被害状況など各種情報を一画面に表示することで、発災初動期から自動で被害情報を収集する。
本格稼働に先立ち実施した実証では、従来の人手による発災直後の情報収集や状況把握に要した時間を大幅に短縮するといった効果を確認した。都の職員が被害状況を迅速かつ的確に把握できるため、都民への情報発信や警察、消防、自衛隊などとの連携など、東京都の災害対応の高度化に貢献する。
システムは、東京都内で大規模な地震などが発生した場合に、東京都の防災担当職員が利用することを想定している。具体的には、都庁などに設置されている4台の高所カメラがそれぞれの高所カメラの視認範囲を自動で撮影し、その画像をリアルタイムで解析する日立独自のAIが火災、煙、建物の倒壊を自動検知する。さらに、発災地点を特定し、一覧や地図上で分かりやすく表示する。一覧では、発災地点が木造家屋の密集地帯である木密地域であるかなども表示し、東京都の職員が対応の優先度を検討する際にも役立つ。
東京都は、被害情報の収集自動化により、刻々と変化する被害状況を迅速かつ継続的に把握可能になる。システムから得られた情報をもとに、発災時の限られた人的リソースをより有効に配置し、都民への情報発信や警察、消防、自衛隊など関係機関への情報提供といった状況に応じた機動的な対応可能とするなど、都の災害対応の高度化に貢献する。
東京都は、都民の生命を最大限守り、災害時における救出救助活動などの戦略決定に資する情報を収集するため、発災後の職員の初動や伝達体制などを定めており、発災初動期の被害情報の収集など、迅速な初動対応の実施を図っている。しかし、従来、発災直後は限られた人員が手動で高所カメラを操作しながら被害を確認し、発災地点を特定していたため、都内全域の詳細情報を漏れなく継続的に収集して、対応に結び付けることに時間と労力を要していた。
こうした背景を受け、東京都が推進する「未来の東京version up 2022」戦略の注力案件の一つとして、日立がこれまでに培った映像解析の技術やノウハウを用い、システムを開発するに至った。
今後も、本システムと連携するカメラ台数を2台増やし、全6台で運用して、東京都のより広い範囲の被害を検知するとともに、AIの追加学習などアップデートも進める。
また、システムに活用した独自AIや、デジタルイノベーションを加速する日立のLumadaで展開する各種ソリューションを用い、今後も自治体や警察や消防機関での災害対応のDX推進を支援し、二次災害の抑止や救護活動の迅速化、インフラの早期復旧などにつなげていく。
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