セコムは、人や車を画像認識AIで検知する国産の次世代機「セコムドローンXX」を開発した。AIに加え、雨や風の中での自動運用を可能にした飛行性能で、XXの名の通り、フィジカルセキュリティに限らず災害対応やインフラ点検などの多用途(X)でドローン市場そのものの変革(X)を目指す。
セコムは、AIを活用して上空からの「巡回警備」や地上のセンサーと連携した「侵入監視」をメインで行うドローンの次世代機「セコムドローンXX(ダブルエックス)」を自社開発し、2024年春に発売する。
2023年10月12日には、千葉県浦安市千鳥の「浦安ヘリポート」で、新型機の御披露目の場となる記者発表会を開催した。
セコムは、「ドローン」という名称が一般化する前から警備業務での活用を模索していた。会場となった浦安ヘリポートは、セコムのジェットヘリ2機を格納し、島しょ部や遠隔地の警備と、最近では自治体の要請で災害時の救助や情報収集といった業務にあたっている。しかし、そうした大型航空機では急行できない短時間犯行の増加を背景に、2011年に画像認識やAIなどの先端技術を研究している「IS研究所」で機体開発をスタートさせた。
2015年12月には、夜間または雨天のフライトと、建物の近くで“レベル3飛行”(=無人地帯の補助者無し目視外飛行)に対応した自律飛行監視用の「セコムドローン」を実用化し、侵入監視サービスの1つとして提供している。不審者や不審車両の侵入を地上のレーザーセンサーが検知すると、ドローンポートから飛び立ち、レーザーセンサーの位置情報をもとに自律飛行で目標へ向かい、映像を「セコム・コントロールセンター」へ伝送して緊急対処員が急行して警備業務にあたる。
セコムドローンの時点で、既に離陸から、自律飛行、ポートへの着陸、点検、充電までが自動化されており、昼夜や雨天を問わない運用が可能な点が、施設管理者などに好意的に受け入れられた。一方で、耐風性能や短い飛行時間と飛行距離、上空LTE通信が使えずWi-Fiが必須でアクセスポイントの設置が高コストといった課題も残った。
セコム 常務執行役員 企画開発担当 上田理氏は、「セコムドローンは、当社だけが使用するのが目的だった。しかし、顧客からの一般販売とスペック改善の要望を受け、セキュリティに限らず周辺領域で広く活用してもらう意図で、2018年に次世代機の計画に着手した」と説明する。裏付けるように新型モデルの機種名“XX”には、「安全管理(Safety)」「巡回(Patrol)」「監視(Surveillance)」といったセコムが得意とする「セキュリティ(Security)」だけでなく、「撮影(Photography)」「点検(Check、Inspection)」「防災(Disaster)」など、さまざまな用途(X)で変革(X)を起こしていくとの決意が込めている。
さらに上田氏は「当社は2023年5月に、「セコムグループ Road Map 2027」を策定し、その中のロードマップ“2030 VISION”で、ロボティクス、パーソナルモビリティー、ウェラブルデバイス、情報処理などを活用した“警備DX”により、2030年に社会全体や地域のあらゆる場面で安全安心の品質向上を目指すことを目標に定めた。新開発のドローンも、その文脈に沿った施策の一つ」とその先の展望も明かした。
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