Archicad新バージョンは、“加速する日本のBIM活用”に対応 グラフィソフトジャパンのアップデートを一挙紹介Building Together Japan 2023(1/4 ページ)

グラフィソフトジャパンは、Archicadの新バージョン発表会を兼ねたオンラインイベント「Building Together Japan 2023」を開催した。Archicad 27の国内初となるデモンストレーションと新機能を解説するとともに、「素晴らしい建築を創造するチームに力を与える」のコンセプトに基づく今後の開発方針を示した。

» 2024年01月09日 14時23分 公開
[加藤泰朗BUILT]

 グラフィソフトジャパンは、BIMソフトウェア「Archicad」の最新バージョンを発表したオンラインイベント「Building Together Japan 2023」を2023年10月に開催した。オープニングを飾った「グラフィソフトプレゼンテーション」には、グラフィソフトジャパン 代表取締役社長 トロム・ペーテル氏と、カスタマー サクセス ディレクター 飯田貴氏が登壇した。

加速する日本のBIM活用の現在地

 講演前半はペーテル氏が、日本のBIM活用状況について、3年前から加速させる出来事が続いているとし、特に注目しているトピックスを3つ上げた。

グラフィソフトジャパン 代表取締役社長 トロム・ペーテル氏 グラフィソフトジャパン 代表取締役社長 トロム・ペーテル氏

 その1つはコロナ禍。ペーテル氏はその影響について、「コロナ禍を経験して、仕事の進め方は大きく変容した。人との接触が制限され、これまで対面で行っていた業務もデジタルツールを使って遠隔で進めなくてはならなくなった。そうした環境変化でBIMは、クラウドを介して、遠隔とつながれる強力なソリューションとして認識され、徐々にユーザーが増えている」と言及した。

 2つ目は建設業界が抱える課題解決に向けた動きだ。従業員の高齢化や人材不足、常態化した長時間労働、建材価格の高騰などに直面する建設業界では、業務のDXが進んでいる。また、国土交通省は、2022年度2次補正予算で、80億円規模の「建築BIM加速化事業」を新設して助成金制度を整備。2025年からは、BIM確認申請も試行する意向だ。ペーテル氏は、こうした動きがBIM普及を後押しする要因になっていると指摘した。

 3番目は景気の回復。ペーテル氏は2023年に入って、景気は緩やかな回復基調にあるとし、「5月頃からはコロナ禍の影響も薄れ、投資に前向きな企業も増え、積極的にBIMを導入する企業も増えてきた」と手応えを口にする。

BIM活用の新時代へ 最後の一歩に必要なこととは

 一方でペーテル氏は、日本のBIM活用が、イギリスやシンガポール、北欧諸国のように建設業界がBIMをベースにしたワークフローで動く段階に到達するまでには、あと一歩足りないとの見解を示した。その“あと一歩”を埋めるのは、BIMに関わるリテラシーの向上とし、その理由を国交省がとりまとめた「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」を参照して解説した。

 実態調査によると、日本の建設業界の約50%は既にBIMを使用している。ただ、企業規模別では、スーパーゼネコンや大手設計事務所の約9割がBIMを使っている一方で、中小企業では導入が進んでいない。

 中小企業でBIM導入が進まない理由は、「BIM無しでも業務が十分にこなせる」「発注者などからBIM使用を求められていない」の2点。ペーテル氏は、中小建設業のこうした認識を変えるためにも、「BIM活用のメリットなど、BIMに関するリテラシーを向上させる必要がある」と強調した。

国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」にみるBIM導入状況 国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査」にみるBIM導入状況

 ペーテル氏は、中小だけでなく、大手企業にも問題があると指摘。BIMは関係者間で連携し、業界全体で活用することでその真価を発揮するが、大手企業では社内の“部分最適化”の目的のみでBIMが活用される傾向がある。「BIMを導入することは、CADのような新しいツールを採用することとは異なる。BIM導入が会社全体のプロセスを変えるものであるべきだ」(ペーテル氏)。

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